●ニュー・シネマ・パラダイス
その、映画ファンでもある渡部陽一さんが「マイベスト映画」と言っていたのをはじめ、この映画をNo.1映画と言う人も少なくない。
本作はいくつかのバージョンで発表されている。日本では173分(長尺)版と123分(短縮)版が公開・ソフト化されている。
短縮版ではイタリアのシチリアの小さな村にある唯一の映画館「パラダイス座」が物語の中心となるのに対し、長尺版では主人公の人生に焦点が置かれており、青年期のエレナとの恋愛や壮年期の帰郷後の物語が丹念に描かれる。
この映画は、中年男性が、映画に魅せられた少年時代の出来事と青年時代の恋愛を回想する物語。感傷と郷愁、映画への愛情が描かれた作品である。
主人公のトトこと、サルヴァトーレ・ディ・ヴィータの少年期をサルヴァトーレ・カシオ(現在38歳、写真左)、青年期をマルコ・レオナルディ(現在46歳、写真左より2番目)、中年期をジャック・ペラン(現在77歳、写真中央)が熱演し、彼が恋したエレナの若年期をアニェーゼ・ナーノ(現在52歳、写真右から2番目)、中年期を前作の「禁じられた遊び」
で紹介した、ブリジット・フォッセー(現在72歳、写真右)が演じた。
余談だが、自分が観た長尺版では、「故郷に戻った初老のサルヴァトーレは、カフェでエレナに生き写しの少女を見かけて動揺し、彼の幼馴染のボッチャが彼女と結婚し、娘が生まれていたことを知る」のだが、、ブリジット・フォッセーはアニェーゼ・ナーノには似ていない。Wikipediaによると、監督は、当初その役をシルヴァーナ・マンガーノ(1989年、59歳で没、写真)に依頼する考えでいたが、本人の体調が芳しくなくオファーを断念したという。実際、映画公開の翌年に彼女は亡くなっている。重要なシーンだけに、配役のミスマッチだったように思う。
■あらすじ
週末になり、映画館で旧式の映写機が回り出すと、アメリカ映画に出てくる信じがたい豊かさや、保守的な村ではありえないロマンティックな男女関係など、目を丸くして見ている村人たちの前に外の世界が写しだされた。
それから30年がたち、ローマで映画監督として成功し、中年となったトトは、アルフレードの葬儀に出席するため、年老いた母の待つ故郷の村に帰ってきた。そこで彼は映画館がすでに閉館し、建物の取り壊しも近いことを知る。
ローマに戻ったトト=サルヴァトーレは、アルフレードが彼に遺した形見のフィルムを映写する。そこには複数の映画のラブシーンがオムニバスで編集されていた。かつて司祭によって削除されたキスシーンを、アルフレードがつなぎ合わせたものだった。映像を見ながらサルヴァトーレは過去を懐かしみながら、涙するのだった。 (画像)
映画の内容と相まってエンニオ・モリコーネの音楽がよく知られている
名画には、名セリフ、名場面、名優、名曲が付き物。
●カサブランカ
1942年公開の映画の題名でもある「カサブランカ」(Casablanca、地図)はフランス領モロッコにある都市。
ときは第二次世界大戦、ドイツ軍の侵攻が激しい時期。ヨーロッパからアメリカへ行くためには、マルセイユから地中海を渡ってカサブランカへ行き、リスボンからアメリカへ行くしかなかった。
カサブランカからリスボンへの飛行機は出ているが、リスボンへ行くには無記名ビザの入手が必須。
女:「ゆうべは、どこにいたの?」 男:「そんな昔のことは忘れた」 女:「今夜、どうしている?」 男:「そんな先のことは分からない」
男:「3人のために考えた。俺の答えはこれだ」 女:「あなたは?」 男:「君とのパリの思い出に生きる。ゆうべ気付いた」 女:「離れないと誓ったわ」 男:「分かってる。俺にも仕事がある。君は俺の仕事の一部ではないんだ。俺は粗野な男だが、こんなに狂った世の中を見過ごせない。いつか分かる。さあ。君の瞳に乾杯」
沢田研二のヒット曲、「カサブランカ・ダンディ」の「カサブランカ」は映画「カサブランカ」を指し、歌詞中の「ボギー」とは「カサブランカ」の主演俳優ハンフリー・ボガートの愛称である。
沢田研二/カサブランカ・ダンディ (1979年)
●ライフ・イズ・ビューティフル
だが、戦争の色が濃くなり、幸せだった家族には強制収容所行きの過酷な運命が待ち受けていた。
「これはゲームなんだ。泣いたり、ママに会いたがったりしたら減点。いい子にしていれば点数がもらえて、1000点たまったら勝ち。勝ったら、本物の戦車に乗っておうちに帰れるんだ」
幼い息子を生きながらえさせるため、父親の命がけの嘘がもたらした奇跡の物語である。