前作でニュー・シネマ・パラダイス、カサブランカ、ライフ・イズ・ビューティフルという3つの映画を紹介したが、後でその共通点に気がついた。
●戦争の悲惨さを描く
まずは3作とも第2次世界大戦前後という時代背景にあることだ。そして、後の2作は「戦争の悲惨さ」をメイン・テーマにしている。
ところで、戦争からもう70年以上経ち、その怖さを知らない世代が大半になっている。
最近はよく「平和ボケ」という言葉を耳にするが、辞書によると、「戦争や安全保障に関する自国を取り巻く現状や世界情勢を正確に把握しようとせず、争いごとなく平和な日常が続くという幻想を抱くこと、あるいは自分を取り巻く環境は平和だと思い込み、周りの実情に目を向けようとしないことなどを意味する表現。主に安全保障などに無関心である日本国民に向け、皮肉を込めて用いられることが多い」 と書かれている。
自分は「戦争をしない国」と宣言することが一番安全保障につながると確信している。もちろん売られた喧嘩には対抗して自衛はする。それは当然の権利だ。
原発事故のときもそうだったが、日本は世界の尊敬を集める国になる絶好のチャンスを逃し続けている。
それにしても、戦争体験が風化しているのがとても怖い。自分も直接戦争は知らない。しかし、広島県に住んでいたせいもあり、その爪痕が至る所に残っている時代を生きてきた。
戦争は普通の人がいわれも無く殺され、普通の人が戦場で理性を失い、狂気に走る。
こういった戦争の悲惨さを伝える映画はいつまでも見て欲しいと思う。これは誇張ではない、本当の戦争の実態だ。
●恋と愛の切なさを描く
「恋と愛」は、多くの映画の主要テーマである。
恋や愛を伝える手段は「キス」。
■「キス」と言えば、ニュー・シネマ・パラダイスでは、それが映画の主要なモチーフになっている。
有名なラストシーンと共に、トトとエレナが愛し合う場面にもキスシーンが登場する。
映画の途中雨が降り出したが、その雨に打たれながら情熱的なキスを重ねる次のシーン。(右画像)
次は、イルザ(イングリッド・バーグマン)と、リック(ハンフリー・ボガード)とのキスシーン。
この幸せな恋や愛は長続きしない。次には「別れ」が待っているからだ。
ところが、ローマで映画監督として成功したトト=サルヴァトーレ(ジャック・ペラン)はこれまで何度も恋愛を重ねてきたが、彼女のことが忘れられず、結婚をしなかった。
後を付けると、サルヴァトーレの幼馴染のボッチャがエレナと結婚し、娘が生まれていたことを知る。
なぜ駆け落ちの待ち合わせ場所にきてくれなかったのかと責めると、エレナはアルフレードに言づてを頼んだが断られたので、引っ越し先の住所とメッセージを上映メモの裏に記し、映写室の壁に残したのだと説明する。
アルフレードはサルヴァトーレが村を離れて自分の道を進めるようにするため、エレナにサルヴァトーレと別れるよう説得していたのだった。
経緯を知ったサルヴァトーレはアルフレードに怒りを感じるが、エレナは「私と結婚していたら素晴らしい映画は撮れていなかった」と言う。サルヴァトーレとエレナは車のなかでキスし、束の間に愛を確かめる。
前作・「映画好きの人、必見の映画と言えば?」の繰り返しになるが
最後の言葉「君とのパリの思い出に生きる」「君の瞳に乾杯」。(画像)
男:「3人のために考えた。俺の答えはこれだ」 女:「あなたは?」 男:「君とのパリの思い出に生きる。ゆうべ気付いた」 女:「離れないと誓ったわ」 男:「分かってる。俺にも仕事がある。君は俺の仕事の一部ではないんだ。俺は粗野な男だが、こんなに狂った世の中を見過ごせない。いつか分かる。さあ。君の瞳に乾杯」
■ライフ・イズ・ビューティフルでは、幸せだった家族に、強制収容所行きの過酷な運命が待ち受けていた。
「これはゲームなんだ。泣いたり、ママに会いたがったりしたら減点。いい子にしていれば点数がもらえて、1000点たまったら勝ち。勝ったら、本物の戦車に乗っておうちに帰れるんだ」
自分の人生を振り返ってみて、「別れ」にはため息をつくばかりだが、こんな映画を観て、自分だけではないんだ、もっと辛い別れもあるんだと思うとともに、「人間の真価とは、避けられない別れのとき、どんな判断をし、相手にどんな言葉を投げかけるかにかかっている」ことを痛感する。
小野リサ/映画「カサブランカ」主題曲「As Time Goes By」