9月30日、沖縄県知事選が終わったが、いろんな意味で現在の日本を象徴するような出来事の連続だった。
日本の民主主義は危機に瀕していることを再認識させられたが、これで、何とか「首の皮一枚は繋がった」。最近にない朗報で、ホッと胸をなでおろしたものだ。
●BS朝日「日曜スクープ」
投票の当日、BS朝日・「日曜スクープ」(画像)のコーナーの一つ、『ニュースの核心に迫る! 時事論考「直前予想・内閣改造」』はとても面白かった。
小松アナウンサーがあまりに安倍首相を擁護するものだから、「お前は安倍の子分か!」と一喝していたが、こんなシーンは滅多に見られるものではない。
開票の始まるのが8時からだから、非常に早い。コメンテーターの川村晃司氏(上写真右)が「これは相当票差があるということだろう」と話していた。
テレビは玉城氏と、その選挙事務所を写していた。ところが、勝利宣言など、何の動きも見られない。
そして、どこのチャンネルを回しても当確のテロップは流れない。どうやら、他局は1時間以上後で流れたようだ。
番組では、その後も彼らのトークは続く。安倍首相の3年後の話題はどこかに飛んで行ってしまい、辺野古への基地移転の裏話などで盛り上がり、その話の方がずっと興味深かった。
田原氏は、「この結果は良かった。イケイケドンドンだった安倍首相もこれで慎重にならざるを得ないだろう」と話していた。
●知事選結果のテレビ報道
期日前投票は過去最高の40万票を超え、有権者の35%、投票者の56%を占めるほどだったので、結果が分かるのは早いはずだ。
さらに、当日のニュースはおろか、投開票から一夜明けた翌日のNHKの『ニュース7』が、沖縄県知事選の結果について、まったく触れなかったことにも驚いた。
民放のワイドショーも、ほとんどが沖縄県知事選の話題をスルーしたそうだ。
最早、テレビ、特にNHKは末期的症状に陥っていることが良く分かった。
●携帯電話料金の値下げ問題
今回の知事選で見えたのは、自民党と公明党のなりふり構わない選挙活動。これだけやったのに大差で敗北したことは、大きな衝撃を受けているはずだ。
自民党は、菅義偉官房長官や小泉進次郎筆頭副幹事長など中央から有名な政治家を次々と投入するとともに、地元企業に圧力をかけるなど、総力戦で臨んだ。
そして、公明党・遠山清彦議員のデマ動画拡散、デマツイートを始め、佐喜真支持者らの玉城氏に対する卑劣なネガティブキャンペーンである。
だが、沖縄を巡って一番大きなウソをぶち上げてきたのは、ほかならぬ官邸かもしれない。
自分も携帯電話料金は高いと思っていただけに、一瞬、「わが意を得たり」とばかり、感心したものだ。
しかし、これは経済失策と、消費税増税の不安を打ち消そうとし、基地問題から目を逸らせようとする謀略だった。沖縄に来ても有権者への目くらましのために、携帯電話の値下げ断行という演説を行っているのに驚いた。
冗談ではなく、本気で言っているのかと眼を疑った。
なぜ沖縄県知事が「携帯電話料金4割削減」を実現できると嘯くのか。
これを信じる有権者がいるとでも思っているのだろうか。
当たり前のことだが、総務省は「国の法で料金をこれにしようと言える権力はどこにもない」と回答しており、県知事にも国にも権限はないと説明。
政府関係者も「(引き下げを求められても)事業者側がそれに従う法律などはない」と答えている。
また、仮に全国的に値下げの余地があるならば、それは総務省や携帯キャリアを中心に調整されるもので、全国的な話題であって沖縄県の話ではない。
逆に、沖縄だけ携帯電話料金の大幅値下げを行おうというのであれば、なおさら意味がわからない。
実は、3年前にもこれとよく似た構図があったそうだ。
2015年12月、当時、宜野湾市長だった佐喜真氏は官邸の菅官房長官のもとを訪れ、「普天間基地の跡地にディズニーリゾートの施設を」なる要望を伝えた。菅官房長官は「政府として全力で誘致実現できるようにと誓いたい」と言って、前向きな姿勢を示したという。
約1カ月後の宜野湾市長選では「ディズニーリゾート誘致」を公約に掲げて佐喜真氏が勝利したわけだが、しかし、あれから3年が経とうとしているなか、この話は、たち消えになったのかどうかもわからないほど音沙汰がない。
実際、今回の知事選に向けた佐喜真氏の公式サイトのどこをみても「ディズニー」のデの字もなく、ディズニーリゾート誘致は絵に描いた餅どころか、有権者を“釣る”ための餌だったことがはっきりした。
いずれにしても、近年の選挙では稀に見るほどのデマと謀略の嵐となった沖縄知事選だったので、これに踊らされる有権者もいるのではないかと心配していたが、沖縄県民は賢明だった。
●創価学会員の叛乱
今回の知事選で光明を見いだせたのは、創価学会員の叛乱だ。
しかし、ニュースによると、公明支持層の3割以上が玉城氏に投票したという。
玉城氏の支持者が集まる那覇市内の会場では、公明党の支持母体である創価学会のシンボルマーク「三色旗」を持った人の姿があった。(写真)
「文字通り、組織に反旗を翻して、ひとりで頑張ってきました」
「実質、政府方針に賛成していると言える佐喜真氏を推薦するのは、筋が通っていない。おかしな話です」
「それに佐喜真氏は、(復古的な思想で知られる)日本会議との関係が指摘されていました。池田大作先生の基本理念である平和思想とは相入れない。絶対におかしいと思ったのです」
核も、基地もない、平和で豊かな沖縄になってこそ本土復帰である---それが、沖縄の人々の思いであり、また、伸一の信念であった。(『新・人間革命』第13巻 楽土より)(画像)
創価学会の池田大作名誉会長は、著書『新・人間革命』でも核兵器や基地を沖縄に負担させるべきではない、ということを記している。これは、沖縄創価学会のホームページにも掲載されている言葉だ。
「少ないが、良心を持った学会員がいるはず。組織に従順になることが、信仰ではない」
「1968年1月1日、公明党は日米安保を破棄して、日本は永世中立国になるべきだという見解を発表したんです。
当時は55年体制といって、自民党だけが保守政党で、あとは社会党、共産党、民社党、公明党と野党全部が革新勢力だったのね。今の公明党からは考えられないことだけど、立派に平和勢力の一員だったのです。年表だけ見ると、頭が混乱しそうね」
組織のロボットではなく、自分で考える信者の出現が頼もしい。