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ウクライナ【その2】

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 前作、ウクライナ【その1】では主にウクライナの概要について述べたが、もちろん限られた紙面では語り尽くせない重い歴史と現在の姿がある。
 

 今回は現在置かれている問題について言及してみたい。


イメージ 1 前作で紹介した黒川祐次​物​語​ウ​ク​ラ​イ​ナ​の​歴​史​ ヨーロッパ最後の大国」を見ても、5世紀のキエフ創建以来、ウクライナの歩みは周辺との抗争史だった。
 
 過去は、東に蒙古ロシア、西にポーランド、南には黒海を隔ててオスマントルコ
 
 20世紀後半、はるか西方にEUという「強国」が台頭し、現在も8カ国に囲まれたウクライナは、地政学に翻弄されている。
 
 国は引っ越せない。こうしたことに無縁の島国・日本は、幸運である。
 

 もしも、日本が中国・韓国・ロシアと地続きだったらと思うとぞっとする。


 ウクライナの国歌の名は「ウクライナは滅びず」 である。
 
 曲は1863年に完成し、紆余曲折の末、2003正式に国歌に採用された。
 
 ウクライナの栄光も自由もいまだ滅びず、若き兄弟たちよ、我らに運命はいまだ微笑むだろう。

 我らが敵は日の前の露のごとく亡びるだろう。
 
 兄弟たちよ、我らは我らの地を治めよう。

 我らは自由のために魂と身体を捧げ、兄弟たちよ、我らがコサックの氏族であることを示そう。
 

 と歌う。


イメージ 9 一方、上下を青と黄で分けたウクライナの国旗は、ロシア帝国の支配下、19世紀半ばに盛り上がった民族解放運動に伴い、1848年にウクライナ民族の旗として決められた。
 
 この二色は、古くから紋章や旗に使われてきた色。青は空黄色は実った小麦を表すとも、青は水黄色は火を表すともいわれるが、国旗の色について公式な説明はされていない。1992年の独立の年に、国旗として制定された。 


 ところで、ウクライナの問題は大きく分けて二つある。
 
イメージ 2 一つはウクライナ本体のことである。
 
 事態はEU・アメリカ対ロシアとの代理戦争の様相を深め、一歩間違えば、内戦はおろか、核戦争の危険すらある。
 
 EU・アメリカのもっとも恐れるのは、ウクライナが親ロシア系の東部と親EU系の西部に分裂することである。
 
 農業と地下資源に恵まれた東部に比べ、西部は国家予算の1割を負担しているチェルノブイリ原子力発電所があるからだ。東部は独立を喜ぶだろうが、西部は大きな負の遺産を抱えることになる。
 
 ウクライナは、旧ソ連時代には核兵器産業の中核にあった。
 
 それでも現在、15の原発が稼働し、核関連技術やミサイル技術を保有している。もし内戦になれば、その脅威はイラク戦争の比ではないという


 今回の反政権デモと政権側の対立は、2013年に親ロシア派で強権的なヴィクトル・ヤヌコビッチ大統領が、一旦は仮調印したEUとの貿易協定締結を見送ったことがきっかけとなっており、基本的には親欧州か親ロシアかという対立構造が軸になっている。
 
 そして、ウクライナの国民が不満を募らせ、今回の政変に至った背景に彼の経済失政がある。ウクライナ経済は2010年と2011年の2年間は比較的良好だった。
 
 しかし、2012年にEU経済が再び落ちこんだ影響で、EU向けの輸出が落ちた。さらに2011年にはIMFの融資も打ち切られている。
 
 ウクライナはデフォルト(債務不履行)寸前の危機にある。
 
イメージ 4 解任され、今は国外に逃亡中のヴィクトル・ヤヌコビッチ大統領(63歳、写真左は、人権違反と国家資金流用の疑いがあるとして追及を受けている。
 
 彼の住まいは「ヤヌコビッチ御殿」と呼ばれ、蓄財・汚職の象徴として今は市民に解放されている。
 
 しかし複雑なのは、その政敵で2月に釈放されたユーリア・ティモシェンコ元首相(53歳、写真右)も決して潔白とは言えないことで、贈賄罪以外にも殺人罪で起訴されていた。
 
 ウクライナの政界は、不正や汚職構造まみれである。
 
 更にEUが、プーチン大統領に対して腰が引けている理由のひとつは、ヤヌコビッチを追放して首都キエフを占拠している部隊が、反ユダヤのネオナチであることだ。


 天然ガスの問題も大きい。
 
 天然ガスの供給・料金設定をめぐる争いでロシア・ウクライナガス紛争」と呼ばれるものがある。
 
イメージ 5 ロシアは旧ソ連時代から、主にウクライナを通る、一大パイプライン輸送を構築、大量に産出される天然ガスを各国に輸出している。
 
 この紛争に関しては被害者と見られることが多いウクライナだが、そもそも彼らは旧ソ連時代から再三無断でガスの抜き取りを行っていた。
 
 特に、ソ連崩壊後の1990年代初頭は料金不払い・無断抜き取りが多発していたため、幾度にもわたるガス供給停止が発生している。
 
 ロシアの天然ガス会社社長のミレル氏は、ウクライナ向け天然ガス輸出代金の未払いが18億ドル(約1840億円)以上に達していることを指摘。
 
 天然ガス料金の前払い制や、代金未払いが続けば供給そのものを打ち切る可能性を示唆している。


 そして、EUは天然ガスの3をロシアから輸入している。ガスの供給を彼らに頼っているEUは、最初から腰が引けており、間違っても供給ストップになる事態は避けようとしている
 
イメージ 6 上述のロシア・ウクライナガス紛争」を回避するため、2011年、バルト海経由でロシアの天然ガスをドイツに輸送する「ノルド・ストリームパイプライン」が稼働を開始した(右図)
 

 ロシアのブイボルクとドイツのグライフスワルトを結ぶ、海底1224キロメートルもにわたる長大なパイプラインだ。


 そしてさらに二つのパイプライン計画がある。
 
 一つは、サウス・ストリーム」(下図)というウクライナを迂回するルート。
 
 ロシアから黒海・ブルガリアを経由して、ギリシャイタリアオーストリア天然ガスを輸送する。

 
 もう一つは、ルートのみならず供給源もロシア以外に求める計画で、ナブッコ・パイプライン」(下図)と呼ばれる。
 
 サウス・ストリーム計画はロシアが、このパイプライン計画を阻止するプランともいわれる。

イメージ 7


 しかし、どちらも計画が進んでいない。
 
 それにはさまざまな理由があるが、EUのエネルギーミックスが多様化し、すでに2近くが再生可能エネルギーであること。シェール革命もその要因一つで、建設の意義が薄らいでいる。

 そもそもこれらのパイプラインはウクライナの危険ファクターを回避するために計画されたものだが、2010年に就任したヴィクトル・ヤヌコヴィッチは、ロシアとの懸案だった黒海艦隊駐留問題を解決し(ロシアにさらに25年の駐留を認めた)、他方、ガス価格も安く抑えることに成功するなどしたため、ウクライナとロシアの関係が改善した。
 

 ところがこの政変である。ロシアの事情はよく分かる。


 第二はクリミアの帰属問題である。
 
イメージ 8 面積約27000㎢クリミア半島は、ウクライナで唯一ロシア系住民が大半を占める地域。現在の人口200万人のうち、イスラム系のタタール人12%だ。

 クリミアには、侵攻と占領が繰り返された波瀾の歴史がある。1239年にはタタール人が占領。その後1475年にオスマントルコが征服したが、1783年にはロシアが奪還した。

 ロシア革命の後、旧ソ連が統治していたクリミアは、1954年、ニキータ・フルシチョフ首相によってウクライナに移譲されたが、それ以降、紛争を触発する恐れがある地域とみなされてきた。

 1991年にソ連が崩壊しウクライナが独立すると、クリミアは1992年にウクライナの自治共和国となった。

 クリミア半島は、セバストポリ市にロシアの黒海艦隊の駐留基地があることから、戦略上の重要性を保ってきた。

 黒海艦隊は、旧ソ連崩壊後にウクライナがその一部の所有権を主張したため、ウクライナ・ロシア両政府の対立の火種となった。

 長年に及ぶ抗争の末、両国の議会は2010年、ロシアが持つセバストポリの港の租借権を25年延長することを決定。見返りとして、ロシア産のガスの価格は30%引き下げられた。
 
 ところで、ロシア編入の是非を問う住民投票が明日の3月16日に行われる。
 
イメージ 10 首都シンフェロポリの銀行のATM前には連日、人々が長い列をつくる。政府は、ロシア編入が承認されれば、4月から商品の値段表示をロシア・ルーブルに変更する方針。「預金封鎖」の疑念や生活への不安が広がっている。
 
 ウクライナ系の一部銀行では、ATMで1日200フリブナ(約2200円)の引き出し制限がかかっているそうだ。
 話題が変わる。
 
 チャイコフスキーは彼の妹アレクサンドリアが結婚し、ウクライナの首都キエフより100kmほど南にある町、カーミアンカの領地に住んだ。
 
 チャイコフスキーはカーミアンカがことのほか気に入り、1870年代には毎年のように同地に滞在し、そこで多くの曲が生れた。
 
 また、彼はウクライナの民族音楽・民謡を研究し、自分の作品に取り入れた。
 
 次のアンダンテ・カンタビ―レは、妹宅で働いていたペチカ職人が鼻歌で歌っていたウクライナ民謡を元にした曲だそうだ。
 
チャイコフスキー/アンダンテ・カンタビーレ(1871年)
 

イメージ 11 また、「ピアノ協奏曲第一番」の第一楽章の主題はカーミアンカの町で盲目のコブザ(八弦の民族楽器、写真)引きが歌っていたのを採譜したという。
 
チャイコフスキー/ピアノ協奏曲第一番(1875年)
 

 おまけ。ピアノ協奏曲第一番をポップス化したこの曲が大好きなので。…
 
カテリーナ・ヴァレンテ/Tonight We Love
 

イメージ 3
 アメリカ・オバマ大統領「ロシア制裁」と言っているが、プーチンは軟な男ではない。天然ガスなどの資源や米国債など、戦争をしないまでも反撃材料は山ほど持っている。
 
 シリアと同じような結果になるのが関の山だろう。
 
 それにしても、ウクライナ情勢には当分目が離せそうにない。
 
(参考資料:Wikipedia他、写真も勝手に使わせていただきました)
 


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