●ここでも「風」が題名の曲が
曲名を忘れていたとしても、ドラマ「木枯し紋次郎」(写真)の主題歌と言えば、思い出す人も多いのでは?
歌を聴くと、「あっしにゃあ関わりのねぇこって」と、つい決めゼリフが口をつくかもしれません。
小室さんは、ドラマを手がけた市川さん本人から曲を依頼されたとふり返る。
「やはり上條さんが歌い、私が作曲した『出発(たびだち)の歌』のヒット直後だったので、それをお聴きになったのでしょう」
監督にはヒントとして、好きな3曲を示された。
映画「明日に向って撃て!」の挿入歌「雨にぬれても」の親しみやすさ。サイモン&ガーファンクルが歌う「コンドルは飛んで行く」が醸し出す叙情。そして、はしだのりひことクライマックスの「花嫁」が感じさせるテンポの良さ。(中略)
しかし、小室さんは、曲の完成までに、監督から3回もダメを出されたと明かす。
「音楽のことは分からんから、君に全てまかせると、最初はそうおっしゃってたんですがね」
注文は、メロディーに対するものではなく、どこをどう盛り上げるかという、曲の構成を巡るものだった。「曲が完成してみれば、全ては欠かせない助言でした」(中略)
レコーディングでは、上條さんも監督のダメ出しを受けたそうだ。
「もう少しヘタに歌ってくれと言われましてね」。それで、いつもの調子で歌ったのでは、監督の描きたい紋次郎にはならないと気付いた。「少し肩の力を抜いて歌ったら、なんとか監督のOKが出ました」
この曲は、上條さんの曲というイメージが強い。
だが、小室さんも自身のライブで歌い続け、今では欠かせないレパートリーのひとつになっている。「歌の途中でステージから促すと、待ってましたという感じで観客の皆さんも歌ってくれるんです」
「あっしにゃあ関わりのねぇこって」と、他人との関わりを避けた紋次郎。
ニヒルといえばニヒルだが、寂しいといえば寂しい。そこに流れる「どこかで誰かが、きっと待っていてくれる」という歌。
「このフレーズを聴いた時、子どもながらホッと安心した覚えがある」(福島、52歳女性)、「孤独な一匹おおかみの紋次郎も、内心では人間関係の温かさを求めているのだろうなと想像していた」(岩手、60歳男性)
上條恒彦/だれかが風の中で(1972年)
●「風」の名前は多い
日本人は自然現象に名前を付ける名人だ。「風」もその一つ。風には「疾風」「つむじ風」など、漁師や農家の人がつけた名が2千以上もあるそうだ。
四季折々に吹く風の名前ばかりでなく、吹き方によってその名前もさまざま。まるでいろいろな役を演じ分ける役者のように多彩だ。
あなたは、風の名前をいくつご存知ですか?
◇春一番(季語:春)、そよ風、凪(なぎ)(季語:夏)、台風(季語:秋)、木枯らし(季語:冬)という言葉が真っ先に目に浮かぶ。なお、そよ風は春のイメージだが、春の季語にはならないようだ。
このうちの多くは「突風」で、さわやかな風は「そよ風」、無風は「凪(なぎ)」のみだ。
キャンディーズ/春一番(1976年)
ザ・サベージ/いつまでもいつまでも(1966年)【そよ風が僕にくれた】
小泉今日子/木枯らしに抱かれ(1986年)
凪は一日に2回あり、陸風から海風へ切り替わるときの無風状態のことを朝凪(morning calm)、海風から陸風へ切り替わるときの無風状態のことを夕凪(evening calm)という。 夏は特にむし暑く、凪はいやな時間だった。
◇風の名前
■風向によるもの…北風、南風、東風、西風(北風の曲は、マスクの効用で紹介済み)
風向別の呼称は、単に方角だけではなく、その風のイメージが付加されることが多い。日本では、北風は冷たい冬の風、南風は暖かい夏の風として認識されている。
ラッツ&スター/街角トワイライト(1981年)【南風受けながら】
■四季折々の風の名前
【春の風】
・春一番…春の初め、その年に初めて吹く強い南風
・東風(こち)…春を告げる風。菅原道真が京都から大宰府へ左遷されるとき、庭の梅に「東風吹かば にほいおこせよ 梅の花 主なしとて 春な忘れそ」と詠んで別れを惜しんだ。
・貝寄せ…春先に砂浜に貝を運ぶ風
・貝寄せ…春先に砂浜に貝を運ぶ風
Rihwa(リファ)/春風(2014年)
【夏の風】
・薫風(くんぷう)…初夏の新緑が香るような風。
・青田風(あおたかぜ)…青々とした水田の上を吹きわたる風。
・盆東風(ぼんごち)…夏の終わりに吹く東風。暴風雨の前兆。
・青田風(あおたかぜ)…青々とした水田の上を吹きわたる風。
・盆東風(ぼんごち)…夏の終わりに吹く東風。暴風雨の前兆。
【秋の風】
・野分(のわき)…野の草を分けて吹きすさぶ強風。台風を含む。
・いなさ…南寄りの暴風。大雨を伴い、風水害や海難を起こす恐ろしい風。
・金風(きんぷう)…秋風のこと。稲穂をゆらす風。
・雁渡し(かりわたし)…雁が渡ってくる頃の北風。
・いなさ…南寄りの暴風。大雨を伴い、風水害や海難を起こす恐ろしい風。
・金風(きんぷう)…秋風のこと。稲穂をゆらす風。
・雁渡し(かりわたし)…雁が渡ってくる頃の北風。
五木ひろし/千曲川(1975年)【秋の風立つすすきのの径よ】
【冬の風】
・木枯らし…初冬に吹く冷たい北風。木の葉を吹き落してしまうことに由来。
・おろし…冬山を超えて吹き降りる冷たい強風。六甲おろしなどの山の名前が付く。
・空風(からっかぜ)…冬山を超えて吹きつける下降気流で、冷たく乾いた風。関東・東海地方の冬の季節風。
・おろし…冬山を超えて吹き降りる冷たい強風。六甲おろしなどの山の名前が付く。
・空風(からっかぜ)…冬山を超えて吹きつける下降気流で、冷たく乾いた風。関東・東海地方の冬の季節風。
◇その他の風の歌
ラルフ・フラナガン楽団/唄う風(S盤アワー エンディング曲)
松田聖子/風立ちぬ(1981年)
最後はズバリ、この曲。
はしだのりひことシューベルツ/風(1969年)