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北方領土問題【その3】

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 現在、世界中のほとんど全ての場所に、国境線が引かれている。無いのは南極北極だけである。歴史上、国境は国と国の力関係に基づいて、絶えず書き換えられてきた。つまり強者が一方的に国境を定めてきた。 
 
 日本人は「一つの地域の土地は、古くからそこに居住してきた人々のものである」という信念があるが、こういう議論は世界に通用しない。国際法にも「固有の領土」という概念はないそうだ。
 

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 従って、「〇〇は〇〇国の固有の領土である」というのは、法的主張というより、政治的主張という意味合いが強いということになる。 {明治学院大学教授・武光誠「国境の日本史」(文春新書、2013年)(写真)参照}

蛍の光」は軍歌であり、領土の拡張とともに歌詞が変わった

 現在「蛍の光」は2番までしか歌われないことがほとんどだが、本来は4番まである。
 
 4番の歌詞は、次のように領土拡張等により文部省の手によって何度か改変されている。
 
 千島の奥も 沖縄も 八洲の内の 守りなり(樺太・千島交換条約・琉球処分後)
 千島の奥も 台湾も 八洲の内の 守りなり(日清戦争による台湾割譲後)
 台湾の果ても 樺太も 八洲の内の 守りなり(日露戦争後)
 
 戦後はこの国家主義的とも取れる歌詞が敬遠され、また日本固有の領土である千島や沖縄が他国の占領下に置かれたという事情もあり歌われなくなったようだ。


ロシア人が「北方領土は自国の土地」と単純に信じているのはなぜか?北野幸伯・ロシアから見た「正義」2016.10.3

 なぜだろうか?ロシア人は、「領土というのは、戦争のたびに変わるもの」という意識なのだ。これは、おそらくロシアの歴史と深く関わっている。ロシアの起源は、882年頃に成立したキエフ大公国だ。首都はキエフだったが、現在はウクライナの首都になっている。ロシアの起源である都市が、外国にあることに注目だ。

 キエフ大公国は1240年、モンゴルによって滅ぼされた。その後、モスクワ大公国(1263年~1547年)→ロシア・ツァーリ国(1547年~1721年)→ロシア帝国(1721年~1917年)と発展した。このように、ロシアは東西南北を征服して領土をひろげ、ついに極東にまで到達した。

 つまり、ロシア領のほとんどは、歴史的に繰り返された領土争いによって獲得した「征服した土地」で、いわゆる「固有の領土」は、比率的にとても小さい。

 こういう歴史を持つロシアに、「固有の領土だから返してくれ!」と言っても、「固有の領土とは何ですか?」と逆に質問されてしまう。だから、北方領土について、「ロシア(ソ連)は日本に戦争で勝った。結果、北方4島はロシア(ソ連)の領土になった」という意識なのだ。

 インテリになると、もっと論理が緻密になる。

 「1875年、樺太・千島交換条約で、樺太はロシア領、千島は日本領と決められた。ところが日ロ戦争の後、勝った日本は南樺太を奪った。ロシアが、南樺太を返してくれと言い続けていたら、日本は返還してくれただろうか?」と質問をされることがある。

 筆者は、「返さなかっただろう」と正直に答える。

 さらに、「日本は、日清戦争で勝って台湾を奪ったが、清が返せと主張し続けたら、返しただろうか?」と続ける。筆者は、「返さなかっただろう」とまた答える。

 すると、ロシアのインテリは「日本は戦争に勝って奪った領土を、話し合いでは返さない。しかし、自分が負けた時は、『固有の領土だから返せ!』という。フェアじゃないよね」と言う。 日ソ中立条約を破った件や、ポツダム宣言受諾後に北方4島を占領した件については、

 「1945年2月のヤルタ会談で決められたこと。米英も承認している」とかわされる。つまり、ロシアは「米英がソ連の参戦を要求した。その見返りとして、南樺太、千島はソ連領になることを認めた」ということで、まったく「悪いことをした」という意識がないのだ(ちなみに日本は、北方4島は千島ではないという立場を取っている)。
 古今東西、征服した国はその地域を取り返されないように既得権を積み重ねる。つまり、自国民を積極的に入植させるのである。

 その例はいとまがない。取り返そうとすると、自国民の安全を確保するため戦争を行うのである。

 この場合、当然その地に住んでいる人の数の多い方が有利である。

 クリミア半島しかり。バルト三国しかり。

 前者は1991年の独立以来ウクライナに属していたが、2014年のクリミア危機でロシアへの編入の是非を問う違法な住民投票が強行されて以降、帰属について国際的な係争状態にある。ロシアは自国に編入したと主張し、実効支配しているが、ウクライナや日本を含め国際社会の多くが現在もウクライナの領土の一部であるとしている。しかし、ここはウクライナで唯一ロシア系住民が大半を占める地域。(図)

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 後者は三国ともロシア帝国に支配されていたが、ロシア革命ののち、1918年に独立を達成した。しかし第二次世界大戦中の独ソ不可侵条約における秘密議定書を発端としてソ連とドイツによる占領が続いた。1940年にソ連に併合され、ソビエト連邦構成共和国であるエストニア・ラトビア・リトアニアの各「ソビエト社会主義共和国」として連邦政府の強い統制下に置かれた。1941年に始まった独ソ戦によりこの地域はナチス・ドイツの支配を受けたが、1944年から1945年にかけて再びソ連に占領された。戦後、ソ連は自らが得た戦前の旧ポーランド領の一部をリトアニアに編入し、現在に至るバルト三国の国境線が確定した。

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 1980年代後半、ソ連国内でペレストロイカが進展すると独立回復運動が高まり、1990年3月11日に独立を宣言したリトアニア共和国では1991年1月にソ連軍との衝突で死者が発生した(血の日曜日事件)。その後、ソ連8月クーデター後の8月20日にそろって再独立を実現させ、同年12月のソ連崩壊へ大きな影響を与えた。三国はロシア人の入植政策を勧めたものの、かろうじて自国民が優位に立っていたので独立できたといえる。
(図)Wikipedia参照)

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 一方、終戦時、択捉島以南の四島には、約1万7,000人の日本人が居住していた。ソ連軍の占領により、約半数の者は自ら脱出したが、それ以外の島民は、1947(昭和22)年から1948(昭和23)年に四島から強制退去させられ、サハリンでの抑留生活を経て、函館に送還された。今、同地には日本人は一人もいない。終戦時とほぼ同数のロシア人のみが住んでいる。

 四島返還は極めて困難だ。
 12月9日の朝日新聞(声)の欄に次のような投書があった。題して「北方領土返還に固執せぬ外交を」

 プーチン・ロシア大統領は11月にペルーであった日ロ首脳会談で、北方領土はロシアに領有権があるという前提で「共同経済活動」を提案した。安倍政権は、日本の領有権を否定することはできないという姿勢だ。

 だが、これは敗戦時に日本が受け入れたポツダム宣言を否定することではないのか。

 ポツダム宣言は、日本の領土を基本的に本州、北海道、九州、四国に限った。その原点になったヤルタ協定では、米国と英国が千島列島を当時のソ連に引き渡すと合意した。

 わが国がポツダム宣言を受け入れたということは、国後、択捉を含めた千島列島をロシア領と認めたに等しい。その後、いったんは歯舞と色丹を日本に引き渡すことでソ連と合意した。

 しかし、日本側が「四島一括返還」にこだわったために、交渉は行き詰まったままだ。

 時代は変わった。政府は北方領土をロシア領と認め、返還に固執せずに友好関係の構築を優先すべきではないか。山口県での日ロ首脳会談以降、結果的に2島だけでも返還されれば、旧島民や漁業関係者には大きな朗報になる。
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 今、木村汎「日露国境交渉史」(領土問題にいかに取り組むか)(1993年、中公新書、写真)を読んでいる。

 ヤルタ協定ポツダム宣言などの経過を詳細に観察すると、日本人としてロシアの北方領土占領が単純には納得できないことが良くわかる。
 一方、あるロシアの学者は2年前、「ロシアにとって、クリミア半島の歴史的、文化的、経済的重要性は北方領土の百倍以上だ」と述べていた。クリミアは北方4島の面積の約5.4倍。気候は温暖で日照時間が長く、農業や観光に適し、200万人が居住。ロシア文学の重要な舞台になった。これに対し、北方領土は気候は苛酷で日照時間が短く、漁業以外に産業潜在力はなく、住民も1万7000人程度だ。

 ただし、安倍首相はウクライナ危機以降、「力による現状変更は許されない」とし、ロシアのクリミア併合を繰り返し非難してきた。年末までG7議長国の日本がG7の結束を崩すことになるクリミア併合承認はできないだろう。これを認めれば、中国による尖閣諸島武力占拠に道を開きかねない。

 昨年の日露貿易は前年比で30%減少、今年上半期もさらに同36%減少しており、原油安などロシアの経済危機を受けて投資環境は悪化している。

 「ロシアが国際的孤立から脱却するには、G7(主要7カ国)で最も攻めやすい日本に、クリミアがロシア領であることを認めてもらうことだ。日本が何らかの形でロシアのクリミア併合を承認するなら、4島のうち3島程度を与えても惜しくはないと思っている節もある。
 
 果たして、12月15日のプーチン会談で安倍首相がアッという決断をするかどうか、見ものである。

 「北方領土問題」を終わります。





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