安倍首相の外交政策が迷走しているというのに、わが国のマスコミはまるで思考停止してしまったようだ。鋭い批判記事が少ない。そのせいか安倍内閣の支持率が落ちない。
1.まず、最初におかしかったのはアメリカ大統領選の行方でお知らせしたように、「安倍首相、ヒラリー・クリントン氏と会談「大統領候補」とは異例」(産経新聞 9月20日)
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2.そのお詫びとばかり、これもトランプ次期米大統領で記述したように、11月17日夕(日本時間18日朝)、彼が当選するや否や、安倍首相は他国に先駆けて会談を行う。
3.続いて国民に過大な期待を抱かせた、北方領土問題。「やられ放題 安倍こそネズミ1匹」(日刊スポーツ12月19日)から。
そりが合わない米・オバマ大統領を尻目に15回以上会談を重ねてきたプーチンが相手。
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「国民の大半がガッカリしているということを、われわれは心に刻む必要がある。時間を区切った交渉のはずだ。経済問題も大事だが、人間は経済だけで生きているわけではない。もう少し、真摯に向き合ってもらいたい」とは自民党幹事長・二階俊博の感想だが、世界の信用も失ったつけは計り知れない。(写真)
日本政治の見通しを不透明にする「地殻変動」3つの兆し(高野孟、日刊ゲンダイ、12月22日)
秋の臨時国会が2度まで会期を延長して内外に発したメッセージといえば、アベノミクスの“成長戦略”の柱としてTPPはずっこけたけれども、まだカジノがあるぞ、という貧相きわまりないものでしかなかった。こんなことで来年の政治と経済は一体どうなるのか、先行きが思いやられるような年の暮れだが、ここへきて、その見通しをさらに不透明にするような地殻変動の兆しがいくつか表れている。
アメリカ・ニューヨークを訪問中の安倍首相は、アメリカ大統領選の民主党候補、ヒラリー・クリントン氏と会談し、日米同盟の重要性を確認した。大統領選の候補者との会談は異例のこと。
この記事で、「安倍首相は、トランプ氏が当選したらどう対応するつもりだろうか」と危惧したが、その通りとなった。
日本の首相が米大統領選挙に勝利した候補者と大統領に就任する前に会談するのは極めて異例のこと。各国に先駆けたとあるが、「慌てた」というべきで、主要国はこんな時期に会談するのを拙速として避けただけだった。
大手マスコミは一様に提灯記事を載せていたが、会談に何の意味があるのだろうかと疑問に思っていた。案の定、安倍首相が「信頼関係を築くことができると確信が持てる会談だった」と言っていたその気持ちを逆なでするように、帰国とほぼ同時にトランプ氏はTPPへの参加拒否を表明した。
さらに、後で分かったことだが、米国政府は日本政府に対し「前例のないことはしないでほしい」と「異議」を伝えていたのだそうだ。
都知事・小池百合子の定例会見では、五輪開催会場を巡るやり取りで、記者に「大山鳴動、ネズミ1匹ではないか」と問われた小池が色を成したことがあったが、くだんの記者に言いたい。「大山鳴動-」はそこで使うのではなく、日ロ首脳会談で首相・安倍晋三に聞くべきことだ。北方領土のうち歯舞、色丹2島の平和条約締結後の引き渡しを明記した1956年の日ソ共同宣言について「主権を返すとは書いていない」とロシア・プーチン大統領が発言した段階で全く両国はかみ合っていなかった。
そりが合わない米・オバマ大統領を尻目に15回以上会談を重ねてきたプーチンが相手。
「私の故郷に招いて話し合う」と親密さをアピールしてトップ会談(写真)でグリップできると考えたのなら安倍の外交音痴ぶりはかなり深刻だ。欧州を向こうに回し、領土返還を餌に3000億円を日本から引っ張り、シリア情勢では日本がロシアに同調したかに見せるなど、やられ放題。当然ながらロシアでは「外交勝利」の紙面が躍る。7日、米英仏独伊とカナダの6カ国首脳、つまり日本を除くG7の各国は、シリア北部のアレッポ情勢(写真)について、人道支援のために即時停戦を求めるとともに、外交努力により平和的な解決を望むとする共同声明を発表した。日ロ首脳会談に浮かれ、G7伊勢志摩サミットで経済制裁に踏み込んだ議長国・日本に声をかける義理もなくなった。
4.そして、突然の真珠湾訪問予定。安倍首相が「真珠湾訪問」をどうしてもしたかった本当の理由(山口一臣氏、12月8日)
今回の真珠湾訪問でいえば、例えば、なぜいま突然なのか? 戦後の歴代首相が真珠湾訪問(慰霊)を封印してきたのは、それが“謝罪外交”につながると見られたからだ。現職首相の真珠湾訪問は日本政府にとっての重要な“切り札”だ。それを安倍首相はなぜ、かくもあっさり出したのか。東京で手に入る限りの新聞をひっくり返したが、腑に落ちる答えはどこにもなかった。
あえて言うと、今年5月にオバマ米大統領が被爆地・広島を訪れたことの“返礼”の意味合いがあるという判で押したような解説はあった。だが、思い出してみてほしい。安倍首相はオバマ大統領の広島訪問に際しての記者会見で、「現在、ハワイを訪問する計画はない」ときっぱり否定していたのだ。米大統領の広島訪問は実現したが、原爆投下に対する謝罪はなかったのだから、これもひとつの判断だ。それがなぜ、わずか半年後に方針転換したのか。いま伝えるべきは、その“方針転換”の意味ではないか。
答えは、容易に想像がつく。11月17日にニューヨークで行われた“異例”の「トランプ・安倍会談」に対する“お詫び”である。
「積極外交」とは聞こえはいいが、失敗して右往左往し、足元を見られるたびにお詫び外交を繰り返す。これに要した無駄な費用はいかばかりだろうか。
「積極外交」とは聞こえはいいが、失敗して右往左往し、足元を見られるたびにお詫び外交を繰り返す。これに要した無駄な費用はいかばかりだろうか。
ウラジミールと、プーチンの名前を呼んで親しさを込めたつもりが、何の見返りもないばかりか、クリミア半島や、シリア問題でロシアが国際的孤立をしているときだけにタイミングが悪い。欧米の反発を受けている。
安倍首相は真珠湾でお詫びをするつもりだろうか。お詫びしてもしなくても、それはそれで内外の反発を受け、袋小路に追い詰められるだけだ。
こんなこともあり、遅まきながら、政治の世界に地殻変動が起きているようだ。
日本政治の見通しを不透明にする「地殻変動」3つの兆し(高野孟、日刊ゲンダイ、12月22日)
秋の臨時国会が2度まで会期を延長して内外に発したメッセージといえば、アベノミクスの“成長戦略”の柱としてTPPはずっこけたけれども、まだカジノがあるぞ、という貧相きわまりないものでしかなかった。こんなことで来年の政治と経済は一体どうなるのか、先行きが思いやられるような年の暮れだが、ここへきて、その見通しをさらに不透明にするような地殻変動の兆しがいくつか表れている。
第1は、安倍晋三首相と二階俊博自民党幹事長との間に吹き始めたすきま風である。安倍が1年がかりで仕組んできたプーチン来日が見るも無残な失敗に終わったことについて、二階は「国民の皆さんの大半ががっかりしている」「(領土問題が)何の進歩もなくこのまま終わるんだったら、あの前触れは一体何だったんだ」「解散、解散とあおって回ったのは誰か」とまでボロくそに批判した。安倍が目指す「長期安定政権化」のキーマンである大幹事長がここまで言うのは、よほどのことで、すきま風どころではなくて突風が自民党と官邸の間に吹き荒れる前兆かもしれない。
第2は、踏まれても蹴られても自民党にくっついて「下駄の雪」とまで言われながら安倍政治の暴走を支えてきた公明党が、ついに腰を引き始めたことである。カジノ法案の採決では、創価学会員からの猛烈な批判に遭って「自由投票」という苦渋の選択をし、しかも山口那津男代表と井上義久幹事長は、それぞれ参院と衆院で反対票を投じて学会に義理立てしなければならなかった。都議会公明党も長年連れ添った自民党から離れて、小池与党に傾く姿勢を明らかにした。公明党が逃げても維新と組めばいいという見方もあるが、それは国会内の話で、仮に次期衆院選で自公選挙協力がないということになれば、それだけで自民党は90から100議席を減らすとみられている。安倍一強、自民党一強とは言うけれども、学会票なしには選挙が戦えなくなっているのが今の自民党である。
第3は、民進党の蓮舫・野田体制が早くもピンチに陥っていることである。国会終盤のカジノ法案への対応をめぐる右往左往は見るに堪えなかったが、それをきちんと総括して、来年に向けて気合を入れ直すための16日の両院議員総会に、何と147人の所属議員のうち54人しか出席しなかったのは驚きである。所属議員の6~7割から相手にされていない執行部がいつまで持つのだろうか。
いずれにしても来年は大きな政治的波乱が待っていそうだ。当たり前だと思う。こんな政治がまかり通るのを黙って見ている国民も我慢強いものだ。