先月は昭和ヒトケタ世代の著名人の他界が相次いだ。
戦後の大衆文化を引っ張ってきた永六輔さん(昭和8年(1933年)生まれ、7月7日、83歳で没、写真左)、大橋巨泉さん(昭和9年(1934年)生まれ、7月12日、82歳で没、写真右)。
平和、自由、民主主義。その大切さを、声高に叫ぶのではなく、笑いを交えて人々に伝え、拙ブログでも何度も登場いただいたお二人だ。
昭和ヒトケタ(一桁)とは、昭和元年(1926年)から昭和9年(1934年)までの、8年7日間のことをいう。
この期間は、大正デモクラシーとか大正ロマンと言われた比較的に平和な「大正」に別れを告げ、関東大震災(1923年)の後、政党内閣の一時的な成立と崩壊、昭和金融恐慌(1927年)、世界恐慌(1929年)などの経済的混乱が発生し、軍靴の音が聞こえる戦時体制に移行し始めた時代であった。
日本の関東軍は1928年(昭和3年)に張作霖爆殺事件を惹き起こし、1932年(昭和7年)3月には満州国を樹立し、同年の五・一五事件で当時の首相・犬養毅が暗殺されてからは政党政治は勢いを失い、現役軍人か軍出身者が就くようになった。そして、18年に亘る日中戦争(1937年~1945年)に突入したのである。
「昭和ヒトケタ世代」には2つの層がある。
それは、前期生まれ(昭和元年(1926年)末~昭和4年(1929年)生まれ)と、後期生まれ(昭和5年(1930年)~昭和9年(1934年)生まれ)という2つの層である。
前期は「真っ只中の戦中派」と呼ばれ、多くは、大戦末期に兵士として戦地へ動員され、また軍需工場に徴用されるなどで、戦争に参加した。特別攻撃隊として出撃したり工場で空襲を受けたりして戦死した例も少なくない。
後期は「焼け跡闇市派」とも呼ばれ、多くは、地上戦が行われた沖縄などの少年兵を除いて戦地へ動員されていない。そして、予科練にも間に合わなかったが、青年学校で軍事教練を受けて、学童疎開などを経験した。
自分とは15歳も離れた長兄は昭和9年(1934年)生まれ。永六輔や大橋巨泉と同世代だ。
ちなみに今「生前退位」で話題の今上天皇は昭和8年(1933年)、皇后美智子は昭和9年生まれ。
今上天皇が「生前退位」をおっしゃるのは当たり前だと思う。80歳を超え、こんな激務に耐えられるはずがない。
長兄は愛媛県・西条市に住み、今も健在ではあるが、さすがに身体にはガタが来ているようだ。
昭和ヒトケタ後期にはよくあるように、学童疎開を経験し、辛酸をなめたという。
自分はその疎開の地(広島県)で生まれた。
昭和ヒトケタ世代で今も健在の有名人も多い。8月20日現在、ご存命の方は以下の通り。
(生年月日(誕生日)データベース参照)
ピンクは俳優・声優・漫談家・アナウンサー・プロデューサー・映画監督・タレント、赤は音楽家、緑色は芸術家・服飾デザイナー・料理研究家・漫画家、オレンジはスポーツ関係者、青は作家・評論家・学者、紫は企業家・政治家、弁護士。
まずは女性から。こんな人たちがいる。
●昭和前期(1926年~1929年)…
月丘千秋、辻久子、石井ふく子、森英恵(写真)、中根千枝(以上、1926年)
菅原都々子、宮城まり子(写真)、京唄子、石牟礼道子(写真)、緒方貞子(写真)、ジュリエット=グレコ、リー=グラント(以上、1927年)
楠トシエ、浅香光代、杉葉子、兼高かおる(写真)、渡邊美佐(以上、1928年)
奈良岡朋子(写真)、安藤まり子(写真)、正司歌江、草間彌生(以上、1929年)
●1930年(昭和5年)…小山内美江子、澤地久枝
●1931年(昭和6年)…八千草薫、久我美子、犬養智子、二葉百合子、山本富士子、曽野綾子、カテリーナ=ヴァレンテ、モニカ=ヴィッティ
●1932年(昭和7年)…岸惠子、有馬稲子、寿美花代、野村沙知代、音羽美子、久保菜穂子、高千穂ひづる、渡辺美佐子、岩崎加根子、木元教子、フジ子・ヘミング
●1933年(昭和8年)…黒柳徹子、草笛光子、岡田茉莉子、鳳八千代、若尾文子、扇千景、海老名香葉子、大山のぶ代、ペギー葉山、マーサ三宅、ロミ山田、オノ・ヨーコ、キム=ノバク
●1934年(昭和9年)…中村メイコ、司葉子、牧阿佐美、広中和歌子、金美齢、ソフィィア・ローレン、ブリジット=バルドー、ナナ=ムスクーリ、シャーリー=マクレーン
男性には、こんな人たちがいる。
●昭和前期(1926年~1929年)…
青木光一、三浦朱門、小川宏、鈴木敏夫、小柴昌俊、円山雅也、トニー=ベネット、チャック=ベリー、ヒュー=ヘフナー、江沢民、フィデル=カストロ(以上、1926年)
無着成恭、織本順吉、童門冬二、出光昭介、長谷川慶太郎、シドニー=ポワチエ(以上、1927年)
三浦洸一、池田大作、柴田勲、久里洋二、羽仁進、ウォルター=モンデール、ファッツ=ドミノ、バート=バカラック(以上、1928年)
神山繁、鈴木健二、津本陽、磯村尚徳、早坂暁、サトウ サンペイ、川久保潔、クリストファー=プラマー(以上、1929年)
●1930年(昭和5年)…曽根史郎、高島忠夫、岡田太郎、竹村健一、岡崎久彦、半藤一利、俵孝太郎、和久峻三、田山力哉、芦田淳、西村京太郎、有馬朗人、秋山実、クリント=イーストウッド、ジーン=ハックマン、ショーン=コネリー、ソニー=ロリンズ、ザ・デストロイヤー、ジョージ=ソロス
●1931年(昭和6年)…山田洋次、木下亮、近石真介、日下武史、穂積隆信、大村崑、羽佐間正雄、海部俊樹、明石康、道場六三郎、三好徹、広中平祐、すぎやまこういち、岡村喬生、猪谷千春、小野喬、岡野俊一郎、陳清波、ジャニー喜多川、ミハイル=ゴルバチョフ
●1932年(昭和7年)…仲代達也、露口茂、田中邦衛、柳澤愼一、矢島正明、五木寛之、石原慎太郎、神津善行、船村徹、野末陳平、稲盛和夫、鈴木敏文、藤井裕久、渡部恒三、内橋克人、森田実、屋山太郎、秦郁彦、広岡達朗、小林亜星、村木賢吉、白土三平、本多勝一、小林完吾、志生野温夫、若山弦蔵、三浦雄一郎、ジョン=ウィリアムズ、ミシェル=ルグラン、フランシス=レイ、ロバート=ボーン、リトル=リチャード、ジャック=シラク
●1933年(昭和8年)…森村誠一、恩地日出夫、矢崎泰久、渡辺貞夫、ウイリー沖山、高木 ブー、菅原洋一、鶴岡雅義、アイ・ジョージ、羽佐間道夫、針すなお、浅利慶太、澤田隆治、吉田義男、金田正一、平幹二朗、宍戸錠、旗照夫、クインシー=ジョーンズ、ウィリー=ネルソン、ロマン=ポランスキー
●1934年(昭和9年)…宝田明、藤村俊二、田原総一朗、藤子不二雄・A、権藤正利、森山周一郎、隆旗康男、筒井康隆、谷道夫(デュークエイセス)、前田憲男、堤義明、山崎正和、宇野亜喜良、森岡賢一郎、ケーシー高峰、財津一郎、ジョージ=チャキリス、パット=ブーン、フランキー=ヴァリ、ジョージ=シーガル、ハンク=アーロン
「花の中年」とは野坂、永六輔(1933年生まれ、2016年、83歳で没、写真右)、小沢昭一(1929年生まれ、2012年、83歳で没、写真左)による「花の中年トリオ」(1974年)。
「違いのわかる年代」とは、1967年(昭和32年)に発売されたネスカフェゴールドブレンドのキャッチコピー「違いのわかる男のゴールドブレンド」に由来する表現である。
勤め人としては1990年代に既に引退した世代ではあるが、第二次世界大戦とその後に続く高度経済成長で完全に文化面や社会面での連続性が途切れてしまった時代にあっては、第二次大戦の開戦前の情報を持つ生き証人でもあり、近年の地域おこしなどで伝統産業や伝統芸能を復活させようとする際には、貴重な証言者ともなっている。
また、零細企業や地方農村では、後継者不足もあっていまだに現役で働く昭和一桁世代が多く、農業や地場産業の担い手として活躍している。(Wikipedia参照)