ここのところ毎年、年初の会社の朝礼や会議で「今年の抱負」なるものを話しているが、振り返ってみると、自分の場合、満足に実行出来たためしが無く、意志の弱い情けない人生を送ってきた。
逆をいえば、抱負が少しでもかなえられていたら、全く違う人生を歩んでいたのかもしれないと、死んだ子の歳を数えてしまう。
●昔の日記が3冊残っている。1962年(昭和37年)-中学1年~2年、1968年(昭和43年)-大学1年~2年、1969年(昭和44年)-大学2年~3年。
いずれも「当用日記」である。辞書によると「さしあたっての用事を記しておく日記」と言う意味のようだ。
■1962年の日記には「年間の構想」という欄があり、そこではこんなことを書いている。今から54年前、中学1年生のときである。
1.規則正しい生活をし、テレビも少しだけしか見ないようにすること。
2.無駄遣いをせぬようにし、こづかい帳をつけ、貯金をすること。
3.必死になって勉強し、組では3番以内、全体では20番以内に絶対入ること。
4.母を大事にし、親孝行(手伝いなど)、口答えをせぬようにすること。
5.日記帳を1年間続けて書くこと(いかなる場合にも)
6.友好関係に努め、ごたごたも話し合いで収め、ごちゃごちゃ言わないこと。
7.健康に充分注意し、1日も休まず、特に鉄棒をしっかりすること。
8.机のまわりをいつもきちんとすること。
思わず、にやりとしてしまう。
■1968年には「年頭の所感」の欄がある。今から48年前、大学1年生のときのことである。
1.倹約→貯蓄 禁パチンコ(注:パチンコ好き) 極力「古本」を買う。
2.読書 岩波文庫百冊の本を読破、社会科学に関する文献を多く読む。
3.勉強 語学学習は毎日する、極力授業に出席、単位を落とさないよう最善の努力。
4.積極的態度 好きな彼女(注:好きな女性がいた)を絶対射止める。
5.生活のけじめ 早寝(22:30)、早起き(6:00) 無駄な時を過ごさない。
6.日記、金銭出納簿をつける。
上記1.の「検約」は生涯のテーマとなった。パチンコは今でも好きだ。
同4.の「好きな彼女」については、完璧に振られた。以来、振られ癖がついている。
同6.の「日記」、「金銭出納簿」も途中からつけていない。
■さらに1969年は、「新年の所感」で次のことを書いている。
1968年は過ぎ去ったが、その感慨は不思議に沸かない。本年の目標も混沌としているが、そんなに過去を慈しみ、大して浮かばない抱負に身を馳せるのもナンセンスじゃないかとすら思う。しかし、少なくとも惰性的な1年にだけはしたくない。何かを得たい。そのためには、自分の保守性を打破して、学業の放棄もいとわない。進歩には冒険がつきまとう。
我輩も今年で成人式を迎える。少しは足場のぐらぐらしない行動と信念を持ちたい。
20歳の成人式を迎えるに当たって、相当気張っている。
これまでに共通していることは「倹約」、「勉強」、「規則正しい生活」である。これらは自分の人生の永遠のテーマかもしれない。これを忠実に励行していたら、人生は全く別物になっていたことだろう。
●折しも、朝日新聞土曜版be・1月16日号に、「(beランキング)今年の抱負は? 節制あるのみ!?厳しい現実」という記事が載っていた。こんな内容だ。
2016年を迎えて2週間以上経ちました。皆さんは「新年の誓い」や「今年の抱負」を立てましたか? 大きなことを成し遂げるのではなく、ちょっとした心がけや習慣一つでも達成できれば、去年と違う自分になれるはず。そんな思いからか、毎日の積み重ねを必要とするような事柄が上位を占めました。
「無駄遣いしない」が1位。ならば去年までは無駄遣いをしまくったのかといえば、そんなことはないようだ。3位の「質素倹約」と並び、年金生活に絡めた回答が目立った。
「年金暮らしなので無駄遣いは出来ない。楽しみのため節約生活のみ。その楽しみとはお芝居を見に行くこと」、「年金生活目前。今年は年金生活シミュレーション年になりそう」。
ささやかな楽しみを諦める人も。「所得が低いのについ自分に言い訳をしてコンビニで無駄遣いをしたりカフェに立ち寄ったりしてしまう。今年こそ改めたい」。現実は厳しいのだ。
ところで、昨年1月17日付ランキングのお題は「今年こそ、実行したいことは?」で、1位は「部屋の片付け・掃除」(2位「ダイエット」、3位「旅行」)だった。よく似た「整理整頓」が今年も2位。「部屋をモデルルーム並みにきれいにする」と、全く同じフレーズで意気込む一方、「終活の一環として、もう読まない本などを整理していきたい」など、「終活=整頓」と考える人も。まさに「整理整頓は永遠のテーマ」かも知れない。
個人的に一票を投じたい「夫、妻に優しくする」も上位にランクイン。「まもなく金婚式を迎える妻から毎年説教されているので」、「他人さんには優しくできるのに、夫には意地悪になる私は悪魔でしょうか。新年こそは優しく! これが大テーマ」。
■「達成率」は16%、すぐ忘れる人も
「いいえ」の人が挫折したもので特に多かったのは「ダイエット」。「少しは痩せたが、最初に設定した目標が高すぎて途中で無理だと悟った」、「ココナツオイルや亜麻仁油などの健康法がとても気に入って毎朝とるようにしたのがいけなかった」。
努力したが及ばず、という人がほとんどだった。抱負が何だったか忘れた」という回答も目についた。「2月になると、きれいさっぱり忘れている」というのはマシな方。中には「七草がゆを食べる頃には」という猛者もいた。
一方、抱負を達成した人たちの回答からは、共通点も浮かび上がった。年間200本映画を見るという目標をほぼ達成したという東京の女性は「記録をつけ、区切りごとに振り返って経過を見る。アプリなどのデジタルツールを活用することも有効」。「日記や手帳、パソコンのデスクトップなど普段目に付くところに書いておくと、忘れず初心に帰ることができる」。どこかに書き留めることが成功のカギかもしれない。
それが無理なら、こんな手も。「新年の抱負や誓いなど、ことさらに立てないほうが心安らかに過ごせる」
実は今回のアンケートで、選ぶ人はいないだろうと思いつつ紛れ込ませた選択肢がある。「内部告発をする」。私は前の部署で、組織の不正に個人として立ち向かう内部告発者を取材することが多かった。最下位だったとはいえ、選んだ人が3人いた。うち1人は教職員で、「きちんと仕事をしない人を告発し、職場の将来を安定させる」。何かお手伝いできることがあれば、ぜひ連絡を下さい。(岩本美帆)
この歳になると、案外「新年の抱負や誓いなど、ことさらに立てないほうが心安らかに過ごせる」というのが正解かもしれないね。