日本人は「任侠もの」が好きである。
「木枯し紋次郎」や「フーテンの寅さん」がその典型である。
上條恒彦/木枯し紋次郎・主題歌「だれかが風の中で」(1972年)
渥美清/男はつらいよ・同名主題歌(1970年)
それを「侠客」と言って、「任侠を建前とした渡世人」を総称していた。
彼の作品から映画や歌にもなったのは、「沓掛時次郎」、「番場の忠太郎」(瞼の母)、「駒形茂兵衛」(一本刀土俵入り)などがあり、多くの有名な渡世人を生んでいる。
島津亜矢が聴かせる。セリフは長いが十分聴きごたえあるよ。![]()

橋幸夫/沓掛時次郎(1961年)
島津亜矢/瞼の母(1991年)
そして、「暴力団」や「愚連隊」というのは怖いが、それと同義語の「やくざ」という言葉に日本人は何となく親しみを感じている。それは、「強気を挫き弱気を助けてくれる」という庶民の期待と支えがあったからだろう。
小泉純一郎元首相の祖父、小泉又次郎は、「入れ墨大臣」「入れ墨の又さん」と呼ばれ、国会の暴れん坊「ハマコー」こと浜田幸一(2012年、83歳で没)も元やくざだった。
橋下大阪市長が、公務員の入れ墨を禁じるどころの騒ぎではなかったのだ。
ディック・ミネ/旅姿三人男(1938年)
東海林太郎/名月赤城山(1937年)
歌舞伎のアウトロー
春日八郎/お富さん(1954年)
歌舞伎の「与話情浮名横櫛」(通称:切られ与三郎)から、「粋な黒塀」「見越の松」「他人の花」といった仇っぽい名詞句を何も知らない子供までもが盛んに歌った。
1991年、春日が67歳で亡くなった時の葬儀では、参列者全員でこの「お富さん」を合唱したという。
坂本冬美/夜桜お七(1994年)
江戸時代前期、江戸本郷の八百屋の娘で、恋人に会いたい一心で放火事件を起こし火刑に処されたとされる少女である。
井原西鶴の「好色五人女」に取り上げられたことで広く知られるようになり、歌舞伎、文楽など様々な文芸・演芸において多様な趣向の凝らされた諸作品の主人公になっている。