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タンゴはダンスか音楽か

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 タンゴの好きな人の多くはダンスか、音楽か、どちらかと言う人の方が多く、両方というのは少ないようだ。

ダンスと私

 自分もその一人。踊りはからきしダメで、音楽一辺倒だった。

 我々団塊の世代はいくつもダンス音楽の洗礼を受けた。 
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 大学時代の男女の社交の場はダンスパーティ(画像)だった。
 
 フォックストロットやジルバに始まり、チャールストン、ワルツ、チャチャチャ、マンボ、ルンバ。タンゴは最も難しい踊りだった。
 

 自分はダンスを全く苦手としていたので、いわゆる「壁の花」(これは女性に使う言葉だが)。指をくわえて踊るのを眺めるだけ。

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 社会人になっても、キャバレーやスナックで軽やかにジルバを踊る仲間を尻目に、ムード歌謡に乗って足元もおぼつかない、チークダンス(画像)を踊るのが精一杯。

 タンゴを踊れたら、その人は間違いなくスターだった。

 映画でタンゴを踊っている印象的なシーンも多い。

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1 .「セント・オブ・ウーマン/夢の香り」Scent of a Woman、1992年)で、盲目の退役軍人を演じるアル・パチーノガブリエル・アンウォーのタンゴ。

セント・オブ・ウーマン/夢の香り 

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2.「トゥルーライズ」(True Lies、1994年)ではアーノルド・シュワルツネッガー扮する凄腕のスパイが、何も知らない妻のジェイミー・リー・カーティスと映画の最後の方でタンゴを踊る。 

「トゥルーライズ」(True Lies)

 ちなみにこの二つの映画に流れていた曲は、タンゴの有名曲の一つで、ポル・ウナ・カベサ (Por una cabeza)という曲。曲名は競馬用語の「首(ひとつ)の差で」を意味する。

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 カルロス・ガルデル(1935年、飛行機事故で44歳で没、写真)が1935年の映画「タンゴ・バー」 (Tango bar) の挿入歌として作曲したもの。

 彼は不世出のタンゴ歌手として知られるアルゼンチンの歌手・俳優であり、その人気の絶頂期に飛行機事故で急逝した事と相まって、現在なおタンゴ界の偶像というにとどまらずアルゼンチンの国民的英雄としての地位を不動のものにしている。

 彼も歌っているが、両映画では、タンゴ・プロジェクトというグループのものが使用されている。

ポル・ウナ・カベサ (Por una cabeza)

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3.「レッスン!」(Take the Lead、2006年)では、アントニオ・バンデラスカティア・バーシラスが、落ちこぼれの生徒たちに情熱的なタンゴを披露して彼らを社交ダンスの虜にさせるシーン。

 *バックに流れる音楽はArmik/Tango flamencoで、映画とは違います。


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4.「シャル・ウィー・ダンス?」(2004年、Shall we dance?)で、リチャード・ギア ジェニファー・ロペスがタンゴを踊るシーン。

 日本映画『Shall we ダンス?』(1996年制作 監督・脚本:周防正行)のリメイク版だが、オリジナルのヒロインであった草刈民代が、忠実にオリジナルを再現したハリウッド版を観て、その忠実さに感動して感泣すると、監督で夫の周防正行に「自分が出た時には泣かなかったのに、なんでこっちで泣くんだ」と言われたという逸話があるそうだ。


音楽と私

 ムード・ミュージック全盛期の時代があった。1960年代から70年代のころ。自分はそのころムード・ミュージックの虜だった。

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  今やBGMになり果てて、想像もつかないが、ムード・ミュージックは当時メジャーな音楽で、その代表曲である、パーシーフェイス楽団「夏の日の恋」(1960年、画像左)は9週連続全米ヒットチャート1位という快挙を成し遂げ、同年のグラミー賞まで受賞したほどの人気で、ポール・モーリア楽団「恋はみずいろ」(1968年画像右)は、同ヒットチャートで7週間1位を快走し、全世界で500万枚以上売れた。

 コンチネンタル・タンゴに人気があったのも同時期だ。

 アルゼンチン・タンゴに対して、ヨーロッパ製のタンゴをコンチネンタル・タンゴと呼ぶが、これは日本のレコード会社が考案した造語のようである。

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 アルゼンチン・タンゴはバンドネオン(写真左)が用いられるのが特徴で、コンチネンタル・タンゴはアコーディオン(写真右)が用いられることが多く、楽器編成も通常のポピュラー音楽での管弦楽編成に近く、別名「シンフォニック・タンゴ」と呼ばれる。アルゼンチン・タンゴはムード・ミュージックのジャンルには入らない。自分はコンチネンタル・タンゴが大好きだった。

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 コンチネンタルタンゴで、まず思い浮かぶのがドイツのアルフレッド・ハウゼ(2005年、83歳で没、写真左)、次にオランダのマランド(1979年、71歳で没、写真中央)、そしてリカルド・サントス(後のウエルナー・ミュラー)(1998年、77歳で没、写真右)と言ったところだろうか。

 アルフレッド・ハウゼとマランドはコンチネンタルタンゴの双璧で、シンフォニックの魅力ではハウゼ、歯切れのよいアコーデオンの魅力はマランドというイメージだった。

 リカルド・サントスは、本来ラテン音楽全般をレパートリーとしていたが、日本ではコンチネンタルタンゴという印象が強かった。
 
 その代表曲が、アルフレッド・ハウゼの「碧空(あおぞら)」、続いてマランドの「オレ・グァッパ」、リカルド・サントスは「真珠採り」後に「真珠採りのタンゴ」とも題された。

 なお、碧空(Blauer Himmel)は、1938年頃のドイツで発表されたコンチネンタル・タンゴ。バルナバス・フォン・ゲッツィ作曲。

 オレ・グァッパ(Ole Guapa)は、1937年にオランダ映画の主題歌として、マランド自身が作曲したもの。タイトルになっている "Ole"というのは、闘牛士などに送る掛け声で、"Guapa"というのは娘とかお転婆娘という意味だそうで、”Ole Guapa”はタンゴを踊る若い娘にかける冷やかしの掛け声で、「よっ、お嬢さん!」といったところだという。

 真珠採り(Perl Fishers、1957年)は、フランスの作曲家・ビゼーのオペラ「真珠採り」(1863年、パリで初演)より、アリア「耳に残る君が歌声」をポップス化したもの。アルフレッド・ハウゼ楽団が 編曲・演奏し、世界的に流行したものだが、リカルド・サントス楽団の演奏と幻想的な女性のバックコーラスがとても魅力的で日本で大ヒットした。

アルフレッド・ハウゼ楽団/碧空

マランド楽団/オレグァッパ

リカルドサントス楽団/真珠採り


 中学生から高校生のころはラジオの洋楽音楽番組に夢中だった。これが当時の主な番組。

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 各レコード会社の洋盤の主に新曲を紹介する番組では、文化放送のS盤アワー(ビクター、DJ:帆足まり)とニッポン放送のP盤アワー(ポリドール、DJ:大沢牧子。ラジオ東京のL盤アワー(コロンビア)というのもあったようだけど、これは記憶にない。多分、田舎にいたので全国ネットワークに入っていなかったのではないかと思う。
 
 当時、ビクターや東芝レコードはアルゼンチン・タンゴにウェイトを置いて普及に取り組んでいたが、ヨーロッパのタンゴに力を入れるレコード会社もあった。それがポリドール・レコードである。

 ポリドールは、ベルリン・フィルドレスデン国立管弦楽団に代表されるドイツのクラシック音楽を一手に扱っていたドイツのグラモフォン社が、ポピュラー音楽を扱うために設立したレコード会社で、日本の受け皿になったのが、戦後、日本グラモフォンを名乗ったことの時期もあった日本ポリドールだった。

 ドイツのポリドールはドイツ語で歌われる曲をあきらめ、楽器だけで演奏されるダンス音楽やムード音楽を売る作戦をとった。

 P盤アワーのイントロを務める「星空のブルース」ベルト・ケンプフェルト楽団がすぐに思い浮かぶ。

 この番組からアルフレッド・ハウゼの「碧空」が大ヒット、コンチネンタル・タンゴの代表的損じ隣、世の中はタンゴ・ブームを迎えることになる。

 この番組から、リカルド・サントス「真珠採り」、ベルト・ケンプフェルト「真夜中のブルース」「愛の誓い(Till)」、映画「最後の楽園」のテーマ「パペーテの夜明け」「太陽がいっぱい」などが大ヒットを記録し、あのビージズもこの番組で日本に知られるようになった。

イタリア・フイルム・シンフォニー・オーケストラ/パペーテの夜明け(1957年)

 アルフレッド・ハウゼは、
1964年からTBSラジオの音楽ラジオ番組で食品メーカー「キユーピー」提供の『キユーピー・バックグラウンド・ミュージック』のテーマ曲、『ミリタリータンゴ』でも有名だ。

 当時は、語り手役の元TBSアナウンサー・今井とも子(今井登茂子)の曲目紹介と演奏中の曲をBGMに、キャッチフレーズなどを読み上げるだけの番組の雰囲気を壊さないCMだけが挟まれ、日曜朝のひと時にメロディーだけのクラシックやインストゥルメンタルを中心に構成された。

 1990年に第1368回の放送をもって四半世紀にわたり番組の語り手を務めてきた今井とも子が降板。同時にキユーピーがスポンサーから撤退。翌月から休日(不定期)の11:00 - 12:53に文化放送の音楽番組で『キユーピー・メロディホリデー』がスタートしている。

  『ミリタリータンゴ』は誰しも一度は聴いたことのある、軽快な曲だ。


 続く。

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