2016年における日本の平均寿命は、男性が80.98歳、女性が87.14歳で、いずれも過去最高で、世界のトップレベルにある。
ところが、実際には右図のように、平均健康寿命でも他国から群を抜く形で最上位にあることが分かる。
2015年の平均健康寿命のトップは日本で74.87歳、次いでシンガポールの73.88歳、韓国の73.17歳と続く。
上位陣は大よそ単純な平均寿命上位国と変わらないのが特徴だが、ある意味当然の結果でもある。なおイギリスは71.44歳、アメリカ合衆国は69.08歳、中国は68.53歳である。
●健康長寿を得るためにはどうしたらいいか
全身の筋肉が衰えないよう、運動や食事に気を付けることが大切だという。
6月3日(日)、今働いている会社が主催している、「体力測定研修」に行ってきた。これは、毎年行われる研修だが、自分は入社して間がないので初体験である。
体力の測定は5項目に渡り、体重や身長の測定で体脂肪や筋肉量も分かる。
その結果は「InBody検査表」に「体成分(水分・タンパク質・ミネラル・体脂肪)分析」、「筋肉と脂肪の割合」、「筋肉部位別(上半身・下半身)バランス」がデータとして出され、今の自分の身体では、何が良くて何が悪いかが明らかになる。
こんなことは過去一度もやったことがない検査だ。
・体重は普段計っているので分かってはいたが、働き始めて7㎏痩せた。社会人になった時の履歴書がなぜか今でも残っているが、その時の体重は54.5㎏で痩せ過ぎである。ところが、以来大型化し、体重が減ったことがなかった。
体重が大きく減ったのは今度が初めて、大げさに言うと、「47年ぶりの快挙」である。それでもまだメタボリックという結果である。適性体重にはあと10㎏も足らない。
・身体測定では、体脂肪が多い以外は全て標準である。筋力の量や左右や上下のバランスも悪くはない。
体力測定では、25点満点の23点とA評価だった。TUGという機能的移動能力が5点満点の4点と、握力が33.7㎏で4点以外は、歩行能力、開眼片足立ちとも満点だった。
握力の低下は認知症の大きな要素のようだから、注意しなければいけない。
TUG(timed up&go test)とは、歩行能力や動的バランス、敏捷性などを測り、一般的には転倒リスクを判断するテストのようだが、これも自信がない。意外性はなく、納得の結果だった。
この仕事は居住者が多いところでは「コンシェルジェ」と言って、受付・総合案内だけを行い、清掃やゴミ出しは別の人が行う場合がある。
自分の担当のマンションは比較的所帯が少ないので、清掃やゴミ出しも行うし、定期的巡回で屋上までを一日何回も往復する。それで体力を使うのだ。
自分のような「ものぐさ」には、ジョギングや筋力トレーニングは向かない。どうしてもやらざるを得ない「仕事」で身体を鍛えるのが性格に一番適していると思っている。
この体力測定の結果は、この1年間家でじっとしていた場合だったらどうなったかを想像するとゾッとする。
●なぜ日本では多くの高齢者が働いているのか
もちろん、体力の維持のためだけに働いている高齢者ばかりではない。生き甲斐を求めてとか、生活のためという人の方が圧倒的に多い。
第2次世界大戦後、主要先進国では1次産業のシェア縮小、所得の向上、年金・福祉の充実により、60歳以上の労働力率は大きく低下した。高齢となったら働かなくても済む社会が到来したのだ。
その理由としては、日本人としての国民性(あるいはアジア的価値観)、すなわち、良く言えば「勤勉さ」、悪く言えば「働き続けることにしか生き甲斐を見いだせない人生観」のせいだという皮肉を言う人もいる。
しかし、高齢者の歩行速度に関する調査や、高齢者が保持している歯の本数に関するデータなどによれば、現在の70歳の身体の状況は、以前の60歳以前に匹敵する(つまり10歳以上若返っている)とされる。
そして、年金給付年齢の引き上げの流れの中で、その状況に対応するため、「改正高年齢者雇用安定法」が2006年に施行され、自社の社員に対して60~64歳の雇用を確保する対策が、企業に義務づけられた影響によるところが大きいと考えられる。
今や、65歳まで引き上げられている年金給付開始年齢が、将来的には、70歳に引き上げられる可能性が取りざたされている。
さらに、現在、少子高齢化とともに人手不足と言われ、「移民対策」が国会でも取り上げられている。これからも高齢就業拡大の傾向が高まっていくことは間違いない。(「日本は主要先進国の中で最も高齢者が働いている国だ」(本川裕著、ダイヤモンドオンライン、2018.3.18)参照)
●高齢者の雇用の実態
2015年の国勢調査によれば、男性の労働力率は、20代後半から50歳台まで9割以上となっており、働いているのが“常態”であることを示している。だが、60歳では9割を切り、その後、65歳には65%となり、70歳では5割を下回るなど、当然のことながら年を取るにつれて仕事を辞めていく。(「日本は主要先進国の中で最も高齢者が働いている国だ」参照、下図)
現実は「働きたいけど働けない」と、「年齢に関係なく、身体が続く限り働きたい」人が多いということが浮き彫りになっている。
一方で、週刊ポスト6月1日号の表紙にこんなことが書かれていた。(左画像)
青で囲っている部分だが、「75歳まで働けば生活費も生きがいも充実→求人なんてほとんどない」とある。中は見ていないが、これが実情だと思う。
ハローワークの求人コーナーに行けば分かるが、高齢者の求人は「警備」、「清掃」、「マンション管理人」に集中している。
それでも65歳以上は非常に厳しい。
ハローワークはまだ嘱託や契約社員、パートという企業の直接雇用で条件はいいが、新聞やチラシでの求人の多くは個人事業主。社会保険料は当然自己負担、交通費も自己負担というのが多い。
個人事業主という名前は一見聞こえはいいが、これはいわゆる「請負」「外注」「一人親方」である。
直接雇用に比べて圧倒的に企業の負担は少ない。今国会でもめている「働き方改革」の枠から外れ、最低賃金も残業も対象にはならない。(もちろん、意識している会社はあるが)
高齢者が働けることは有難いが、こんな日本の雇用の実態も知っておく必要がある。
決して「同一労働同一賃金」ではないのだ。
続く。