日本ほど四季がはっきりした国はないだろう。それが「わび・さび」(WABISABI)という世界に類のない繊細な美意識を生んだことを日本人は誇りにすべきだ。
それにしても四季の中で最も人気のない「冬」。
●人気が低い「冬」の季節
2013年に調査した好きな季節ランキングでは、約4割の人が「春」と回答。冬はわずか4%だ。(グラフ)
【春夏秋冬】好きな季節で性格がわかる? によると、冬が好きだという人は、「活動的で地道な努力家。ウインター・スポーツが好きだという人の中には、集中力があってストイックな人も多い気がします。孤独への耐性も強いのですが、仲間とワイワイ遊ぶのが好きなムードメーカーの一面も」とある。
「四季の歌」は、荒木とよひさ(現在74歳、写真)が大学生(19歳)のときに書いた。当時彼はスキー部の選手だったが、2年半余りの入院生活を送るほどの大けがをしてしまった。
その入院先の新潟県妙高市の関温泉の情景をモチーフに、退院時に、看護師に対してのお礼で作成した曲で口コミで広まったと言われている。
その歌詞はこうだ。冬を好きになるには相当、覚悟が必要のようだ。
春を愛する人は 心清き人 すみれの花のような ぼくの友だち
夏を愛する人は 心強き人 岩をくだく波のような ぼくの父親
秋を愛する人は 心深き人 愛を語るハイネのような ぼくの恋人
冬を愛する人は 心広き人 根雪をとかす大地のような ぼくの母親
夏を愛する人は 心強き人 岩をくだく波のような ぼくの父親
秋を愛する人は 心深き人 愛を語るハイネのような ぼくの恋人
冬を愛する人は 心広き人 根雪をとかす大地のような ぼくの母親
芹洋子/四季の歌(1976年)
●「春」はまだかいな
今は「冬」の真っ只中。江戸時代の1787年(天明7年)に出版された「こよみ便覧」(写真)に「冷ゆること至りて甚だしきとなればなり」とあるが、1月20日から1年で最も寒い時期といわれる「大寒」に入ったところだ。
「大寒」の始まりの15日後に控えている2月4日の「立春」も、まだ春のきざしを感じることはないはずだ。その1ヶ月後に当たる「啓蟄」のころになり、ようやく春らしくなりそうだ。
●冬の花
その寒さの中でけなげに咲いている花に愛おしさが募る。
Wikipediaの季語一覧の冬の季語・植物編を見ると、「冬菊 、寒椿 、山茶花 、帰り花 、落葉 、木の葉 、枯葉、枯木 、枯れる 、水仙 、麦の根 、 冬木 、葉牡丹 、柊 、シクラメン」とある。ちょっと記述が少なすぎる。
・個々の花の歌を紹介する前に、「必殺仕事人Ⅲ」エンディングテーマ:鮎川いずみ/冬の花(1982年)を。
1972年からスタートしたTVの人気時代劇「必殺シリーズ」は、一時期中断したものの、2009年6月26日の大団円を迎えるまで、何と37年間、31回シリーズも続いた。
この音楽を一貫して担当したのが昨年亡くなった平尾昌晃さん。好評だった『新・必殺仕事人』に続く『必殺仕事人Ⅲ』は、1982年から1983年、シリーズとしては第19作目だ。主題歌を歌うのは、何でも屋の加代こと鮎川いずみさん。(写真)
「世の中の善と悪とを比ぶれば 恥ずかしながら悪が勝つ 神も仏も無えものか 浜の真砂は尽きるとも 尽きぬ恨みの数々をはらす仕事の裏稼業 へへっ お釈迦様でも気が付くめえ」(OPナレーション:中村梅之助)
<歌詞>怨みつらみが悲しくて なんでこの世が生きてらりょかどうせ一度の花ならば 咲いて気ままに散ってくれ 春と思えば 夏が来て 夏と思えば 秋が来て 所詮最後は 寒い冬
「必殺仕事人Ⅲ」エンディングテーマ:鮎川いずみ/冬の花(1982年)
●春の七草
七草粥を食べることで、1年間の無病息災への祈りを込める意味がある。
その食材になっている「春の七草」(図)は、子供の頃から、「セリ(芹)・ナズナ(薺)・ゴギョウ(御形)・ハコベラ(繁縷)・ホトケノザ(仏の座)・スズナ(鈴菜)・スズシロ(清白) 春の七草」と、五七五七七で調子よく覚えたものだ。
春の七草にはそれぞれ意味があると言われる。
芹:競争に競り(せり)勝つ、薺 :なでて汚れを取り除く、御形:仏の体をあらわす、繁縷:茎に葉がたくさんつく→繁栄をあらわす、仏の座:仏の安座、鈴菜:神を呼ぶための鈴、清白:汚れのない清白
セリは鉄分が豊富で、ナズナは解熱・利尿によく、ゴギョウは咳や痰を取り、ハコベはミネラルを多く含み、ホトケノザは解毒作用があり、スズナは便秘によく、スズシロは消化酵素ジャスターゼを多く含むと聞けば、お節や屠蘇で疲れた胃袋を癒すにはもってこいの薬効食材といえよう。
春の七草の多くが「野に咲く花」でもある。みんな可憐な花が咲く(写真)。しかも目立たずひっそりと。こういう花を大切にしいつも愛しんでいれば、いさかいや紛争は無くなるのではと思う。
●ダイコン(大根)
・ダイコンは野菜としての位置づけにおいては、上述の春の七草の一つ「スズシロ」であり、薬味や煮込み料理にも使われるなど、利用の幅は広い。薬草であり、消化酵素を持ち、血栓防止作用や解毒作用がある。
「だいこんの花」という、元艦長の親子を中心としたテレビドラマ(1970-1977年、NET(現・テレビ朝日))があった。メインライターは最初松木ひろしで後に向田邦子。
元海軍大佐で巡洋艦「日高」の艦長を務めた永山忠臣(森繁久彌)は、早くに妻を亡くしてからは一人息子・誠(竹脇無我)を男手ひとつで育て上げた。忠臣は妻を「だいこんの花のような、素朴だが美しく控えめな人だった」と常々語り、結婚適齢期になった誠にも「妻を娶るならだいこんの花のような人を」と口うるさく言うのであった。
オープニングでは森繁久彌による詩を竹脇無我が朗読する。
「人知れず/忘れられた茎に咲き/人知れず/こぼれ散り/細かな白い/だいこんの花/久弥」
冨田勲/「だいこんの花」テーマ曲(1970年)
●雪椿(ユキツバキ)
「雪椿」は、小林幸子の出身地である「新潟県の県木」、同県加茂市の花に指定されている。彼女は、NHK紅白歌合戦でこの曲を3回歌っている。
今でもカラオケの人気曲であるが、優しいけれど甲斐性のない夫を持ち、苦労しながら前向きに生きる母の姿を描き、歌いながら亡き母を思い出して涙ぐむ人もいる。
今でもカラオケの人気曲であるが、優しいけれど甲斐性のない夫を持ち、苦労しながら前向きに生きる母の姿を描き、歌いながら亡き母を思い出して涙ぐむ人もいる。
作曲者の遠藤実は現在は新潟市になる地に疎開したが、赤貧洗うがごとし、少年時代に住んだのは農家の物置小屋で、同級生から「ボロ屋の子」といじめられた。孤独な中、「たった一人の友が歌だった。歌うときだけは冷たい現実から解放された」。そして、祭りの夜見物と言って家出した。17歳の夏だった。レッスン中にピアノを弾きながら、自身の母を思い出して泣いたというエピソードがある。
このような地域は多雪地帯であり、冬季には三ヶ月にもわたって数メートルの雪に覆われる。その間、ユキツバキは雪に覆われて地表に押しつけられた形で過ごし、春に雪解けが始まるとその姿を現す。すると、倒れていた枝は次第に立ち上がり、花をつける。
小林幸子/雪椿(1987年)