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日野原重明氏の遺作「生きてゆくあなたへ」

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 前々作、聖路加国際病院名誉医院長で、105歳10ヶ月の長い人生を7月18日に閉じた日野原重明氏が最期に残した言葉で紹介した「生きてゆくあなたへ」(105歳 どうしても遺したかった言葉)(写真)を早速買って読んだ。

 この本は、対話形式になっていて、日野原重明氏が、一つ一つその質問に答えている内容だ。

 2016年12月29日から、年末年始を除き1月31日までの1ヶ月間、ほぼ毎日、自宅のリビングルームで行ったインタビューを元に作られている。

 そしてそれは、第1章:死は命の終わりではない 第2章:愛すること 第3章:ゆるすことは難しい 第4章:大切なことはすぐにはわからない 第5章:未知なる自分との出会い

 という構成になっている。今日の新聞に広告が載っていたが、すでに30万部以上売れているという。
 いくつかキーワードとされる言葉がある。

 1.「愛」、「希望」これは彼が敬虔なクリスチャンであることの影響が大きい。

 いつまでも残るのは信仰と希望と愛です。その中で一番すぐれているのはです。(新約聖書 コリントの信徒への手紙 一 十三章十三節)

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 彼が人生の50年以上を捧げた聖路加国際病院の「聖路加」は、イエスの弟子で医者だった福音書を書いた「聖ルカ」(画像)からきている。

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 設立者のルドルフ・トイスラ―(1934年、58歳で没、写真)が遺した理念で、「聖路加病院は病気を治療する場所ではない。神の愛によって患者の苦しみを癒やす場所である」と言っている。

 あなたの希望を分かち合うために、あなたの時間を使うことが愛です。(書斎のファイルから)

 待ち望むこころ、その希望を持つことで 私たちには生き抜く力が与えられる。(書斎のファイルから)

 あなたの心の中の希望を小さく分けて、その一番小さいものが まず叶えられるよう祈りましょう。(書斎のファイルから)

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 <そもそも愛って何ですか?>

 愛とは、人間の生きる目的、すべてだと思います。僕はクリスチャンですが、聖書に「神は愛です」とあります。愛が神様そのものなのです。愛を求めるということは神を求めることに他なりません。(中略)

 人は、愛なしに生きていくことはできません。そして、その愛を与え合う社会こそ、平和な幸せな社会なのだと信じています。
 <すべての人をゆるしてきたのですか?>

 ゆるすということを考えるとき、僕は「恕す」という漢字を思い浮かべます。よく使われる許すでも赦すでもないのです。「恕す」という漢字に、ゆるすという本質的な意味を感じるからです。

 この漢字は、心の上に如くという文字が載っていますね。つまり、ゆるすとは、誰かに許可を出すとか悪いことをした人をゆるすということではなく、「相手のことを自分のごとく思う心」という意味なのです。

 相手を自分のごとく思うということは、相手をゆるすことが自分をゆるすということに他なりません。だからゆるすのは相手のためだけではなく、自分のためにする行為なのです。

 ゆるせない心を持ち続けるのはしんどいことです。だからゆるすことで、私たちは楽になれるのです。

 2.「平和」。真の平和主義者だった。

 <本当に世界平和を実現させることが出来ると思いますか?>

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 僕の年若い真の友の一人に、ペー・チェチョルさん(48歳、写真右)という韓国人のテノール歌手がいます。

  クリスチャンであるペーさんは、歌う前に神様にこう祈るそうです。

 「私のために歌わぬように あなたのために歌う私でいられますように」

 ペーさんの歌声の後ろには、多くの人の思いと祈りがありました。それが彼を支え、世界で初めての奇跡(甲状腺がんの回復)が起こったのです。

 僕はそのことの中に、世界平和があると思うのです。

 人と人とのつながりは国と国との関係を凌駕します。

 相手の国に、自分の家族のごとく思える人がたった一人でもいればいい。そんな人が一人また一人と増えて来たら、国と国との平和は必ずもたらせると信じています。


 3.「長寿」、「死」。

 「生きる」とは死に近づくこと。死の床で死を彫刻することはできない。死に至る前に、その死の顔づくりが自分でなされていなくてはいけない。(書斎のファイルから)

 <自分の死はこわい>

 僕は、そう遠くない未来に自分が死ぬという事実を、とても恐ろしいことだと感じています。(中略)

 死ぬということは人間にとって、また僕にとっても経験していない「未知」の部分なので恐ろしいのだと思います。自分が経験したことのないことについては確信が持てないからこそ、恐れの気持ちがわいてくるのでしょう。

 もしあなたが、僕と同じように、死をこわいと思っているとすれば、それはごくごく自然な感情です。死を前に取り乱すことは恥ずかしいことでもなんでもありません。(中略)

 僕たちは死ぬことから逃れられないし、逃れなくてもいい。死だけを凝視するのではなく、目を背けるのでもなく、ただただいま生きている自分の命を輝かせていくこと。それこそが死と一つになった生を生きるということなのです。
 <年をとっても若く元気でいられるコツは?>

 お若いですね、とか元気ですね、といっていただけるのは、素直に嬉しいものです。

 僕は、食べることや健康習慣だけでなく、美容にもそれなりに気を使っているのです。実は、この年末に、肌のしみとりにもチャレンジしてみたのです。人間には外見を整えることで、人に会いたくなったり、積極的な気持ちがわいてきたりするという心が備わっているのだと実感します。

 そういった外見の若さというのも大事ですけれど、もし僕が若々しいといわれるのだとすれば、いちばんの原因は、常に新しい自分との出会いを大切にすごしているからではないかと思います。

 過去の自分にこだわり、自分のやり方はこうだとか、自分はこういう性質だ、ということを決めずに過ごしています。だから毎日が自己発見の連続なのです。

 <長生きをして幸せか>

 (長生きをしてよかったと思えるのは)100歳を超えたあたりから、自分がいかに本当の自分を知らないでいたかということを感じるからです。

 世の中でいちばんわかっていないのは自分自身のことだ、ということに気づくことが出来ました。これは、年を取ってみないと分からない発見でした。(中略)

 人生の午後が長いということは、幸せなことです。物事の真理というのは、すぐには分かるものではないと実感しています。時間をおき、繰り返し考えることで、後になってだんだん本当の意味が姿を現すのです。
 4.「出会い」。

 <友人について>

 実は、僕は友達が多いほうではありません。確かに数多くの人に出会い、交流を重ね、そのたくさんの出会いは僕の中で宝となっているのですが、本当の友達というのは、ごく少ないといっていいでしょう。(中略)

 では、本当の友達とはいったいどんな存在なのでしょうか。

 僕にとっては、僕のために祈ってくれる人です。

 誰かのために祈る行為とは、相手を自分のことのように思うということです。(中略)

 では、そのたった一人の友を見つけるためにはどうしたらいいのか…。大切なのはインスピレーションです。もし誰かと出会って、この人だと感じたら、その感覚を信じてみて下さい。
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 5.日野原氏が大好きな作品、サン=テクジュベリ(1944年、44歳で没、写真)の小説「星の王子様」(1943年出版)からの引用が多いのも特長だ。
 多くの人がこの本から貴重な人生の教訓を得ることが出来るはずだ。

 映像は2年前のクリスマスコンサート

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 「生きてゆくあなたへ」あとがきにも寄稿している輪島東太郎氏(54歳、写真)が司会している。

 彼は、先の映像の2014年日韓合作映画「ザ・テノール〜真実の物語」のエグゼクティブプロデューサーを務めたが、映画では伊勢谷友介が演じた。


巨星墜つ

 日本は「アンチエイジングの星」と言われた大きな心の支柱を失った。

 こんな人は二度と出て来ないかも知れない。

 日野原重明氏のご冥福をお祈りします。合掌。

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 (小田桐昭氏画)

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