柿が好きだ。牡蠣(かき)も好きなので、陸の「カキ」も海の「カキ」もいずれも好物ということになる。
子供のころ、秋になるといつも干し柿(写真)が縁側に吊るされていた。
まだ渋さが残っているというのに待ちきれなくて食べてしまい、熟したころは柿のヘタだけが紐に残っている有様だった。
●なじみの柿:
2.富有柿:晩成の代表品種で11月中下旬が収穫期になる。完全甘柿で甘みが強く、肉厚、果肉が柔らかい、280グラム程度になるよう栽培出来るのが特徴。花は雌花のみが着き、単為結果性がやや低いため、安定生産のためには受粉の必要がある。早期落果性も後期落果性も低い。
●柿の生産地:故郷の広島県はどちらも産地として有名だと思い込んでいたが、西条柿(写真)という地元産の柿があるものの、どうやら陸の「カキ」は産地というほどではないようだ。
下グラフの通り、生産量は全国で22位。ちなみに海の「カキ」はダントツの第1位だ。
柿は和歌山県、奈良県、福岡県が主要生産地で、この3県だけで全国生産量の42%を占める。(下表) なお、生産量日本一の市町村は、奈良県五條市。果実の生産量では、かんきつ類がNo.1だが、柿はその4分の1しかない。
●ことわざ:「桃栗三年柿八年」と言われ、播種から初回結実までの期間が長い。
「柿が赤くなると医者が青くなる」と言うことわざがあり、豊富なビタミン類とミネラルが栄養価摂取の低い時代では医者いらずの万能薬として重宝された。
「瓜は大名に剥かせよ。柿は乞食に剥かせよ」瓜は実の中心部が最も甘みが強く、皮を厚く剥くとよい。一方柿は皮のすぐ下が最も甘みが強いため極力皮を薄く剥くとよい。
柿は大和名産の御所柿(写真)と思われる。奈良県が全国2位の生産量を誇るのもうなずけるというものだ。
●エッセイ:遠山高史著「素朴に生きる人が残る」(2002年、主婦の友社、写真)というエッセイ集を読んでいると、「日本の柿が美しい理由」というコラム欄があった。
「日本を代表する果物は柿であろう。さまざまな果物が店頭に並び、柿の果物としての人気はそれほどではなくなっているが、日本人は小さな庭でもなぜか柿の木(写真)を植えたがるところがある。
ほかの果物よりはるかに栽培が容易で、しかも日本の風景と木全体が美しく調和するからと思えるのだ」
「柿の実は美しい。その艶のある朱色は、枝にあるときは日本の秋を引き立て、また、街道を行く者たちに安らぎを与える。摘み取られた一つを手に取って眺めても、ほかの果物にはない豊かな輝きがある。
実に限らず、木の姿も人間臭いぬくもりを感じさせる。あまり巨木ともならず、しかし輪郭のはっきりした枝ぶりは遠くからもそれと分かる。密度の濃い大ぶりの葉は、祖霊のへの供物を載せる皿となる。
日本人の生活風景の中に四季を通じてなじんでいるのである」
と手放しのほめようだ。
●ちょっと艶めかしい風習:
民俗学で有名なのが「柿の木問答」というやり取りがあり、九州~東北地方で昭和初期にはこんな初夜のかけあいがあったそうだ。
男「あんたとこに柿の木あるの」 女「あります」
男「よく実がなりますか」 女「はい、よくなります」
男「わたしが上がって、ちぎってもよろしいか」 女「はい、どうぞちぎってください」
男「よく実がなりますか」 女「はい、よくなります」
男「わたしが上がって、ちぎってもよろしいか」 女「はい、どうぞちぎってください」
●おいしい柿の選び方:
この食べ合わせは李氏朝鮮の国王景宗の死因とされる。
●最後は柿の歌
青木光一/ 柿の木坂の家(1957年)
ふきのとう/柿の実色した水曜日 (1979年)