今週の水曜日(11月25日)、会社を休み毎年1回の健康診断に行ってきた。
転勤や転職が多いので健診機関もいくつか変わったが、38歳からは2005年以外はずっと日帰り人間ドックを受診し続けている。
考えて見ると小学校に入学以来、ほとんど毎年健康診断を欠かしたことが無い。
自分は物事をうのみにしない、悪く言えば猜疑心の強いタイプだが、こと健康診断についてはもはや習慣になっていて、バリウムによる胃部X線カメラの放射能照射の問題点は知っていたが、その他に付いてはあまり問題意識を持ったことがなかった。
■健康診断・人間ドックが病気をつくる
という話を聞くと、こころ穏やかではいられない。さらに、
「健康診断は、受けた日の"日記”のようなものです。あくまで、今日の健康状態が分かるに過ぎない。そもそも、厚生労働科学研究班が、『最新の科学的知見に基づいた保健事業に係る調査研究』で、主要24項目のうち、心電図測定や胸部X線など16項目は、医学的根拠が乏しいことを認めています。胸部X線はもともと結核を発見するために取り入れられたもので、1枚のレントゲンで見つけるのは難しい。これで分かるなら、すでに手遅れな状態です。心電図測定で、心筋梗塞などの虚血性心疾患は予見できません」
「世界に類をみない日本発祥のシステム、人間ドッグで有難がるのは日本だけです。世界では、病気が起きていないのに、わざわざお金を払って、病気の判断基準も曖昧で危険な検査を受けません」
「医師は手ぐすね引いて待っていても食べてはいけません。病院は「人間ドッグ」という投網を投げて、再検査に引っかからせ、「患者」を見つけ出す必要があるのです。人間ドッグなら医師法に触れず堂々と宣伝ができる。人間ドッグは、いわば「病気を作る商売」。再検査に持つ込むためにやたら「異常」を連発するのです」
●多発する「人間ドック症候群」
異常を告げられたその日から、ストレスに弱い胃や心臓の不調を訴える人が急増している。
「異常があると言われ、そのストレスから本当の病気になってしまったら、本末転倒です。逆に、人間ドッグで異常がないと言われても過信をしすぎて見落とされた病気が進行する可能性もある。日本人もそろそろ人間ドッグ信仰から脱却しませんか?」
とまで言いきっている。
そして、健康診断に対する批判はまだ続く。
健診には、健康な人間を「病人」扱いにする罠が張り巡らされている。特にメタボ健診の基準はインチキそのもので、世界からも批判を浴びています。
メタボ基準を作った人物たちが製薬会社から寄付を受けているのだから、当然の理かもしれない。健康診断の”正常値”には、巨大な利権が絡んでいると考えてもらっていいのです。
厚生省は、「メタボとメタボ予備軍」について、誤った測定法を定め、その結果、40歳~74歳において、男性は半数、女性は1/5、総数1960万人と結論づけ、2006年5月に”2兆円の医療費削減”を掲げて、2008年からメタボ健診による対策をスタートさせました。
メタボ=条件①+条件②のいずれか
条件① 腹囲:「男性85cm以上、女性90cm以上」OR「BMIが25以上」
条件② 高血糖:血糖100㎎以上、脂質異常症:「HDL40㎎未満」OR「中性脂肪150㎎以上」、高血圧:収縮期130mm以上拡張期85mmHg以上、喫煙習慣
メタボ(対策)推進派も、構造的に医療費の削減にはならないことを理解しているはずです。なぜなら、日本のメタボ健診は、欧米各国と異なり、投薬治療によって成立しているものだからです。海外では通常、生活習慣改善の指導が治療の柱となっていますが、日本では、受診者の7割が薬対応。
●ウエスト測定が、日本はわざとヘソ位置に!!
海外では、内臓脂肪を最も反映する位置として、「肋骨下~骨盤の上」で測定するが、日本では「ヘソ」の位置で測定してしまっている。男性の場合は差が無いが、女性は骨盤の大きな人がいるため、内臓脂肪ではなくて骨盤の大きさを反映してしまった。医学的意味を大きく損なった、稚拙なミスです。
「なぜ女性のほうが大きいのか」、また世界最長寿国でなぜ中年の半数の男性が病気なのか?」という私が抱いた素朴な疑問について、当初はマスコミも盛んに突っ込んでくれましたが、ジャーナリズムと広告収入の関係などの問題もあり、メタボ批判はなくなりました。指摘が上がるのは、海外からだけです。
2006年秋、国際糖尿病連合は「日本のウエスト周囲径基準は奇妙、使わないように」と日本に勧告。同連合は2007年6月、「日本人の基準は、男性90cm、女性80cmとする」と修正しましたが、厚生省は聞き入れませんでした。【11/25健診結果は102.7】
●BMIは痩せ過ぎに注意!
日本基準は、25以上が肥満となります。肥満の世界基準は、30以上。
実は、「日本人は世界一スリム」という研究結果があり、意外に知られていない常識だ。日本人が、世界基準の30以上にすると、肥満は男女ともに約3%しか存在しないことになる。ところが、日本基準の25以上にすると、23.7%、なんと10倍近くにまで増える計算になる。欧米では、25~29.9の群は「正常高値」としている。この群は、最も死亡率の低い健康な集団である。「35を超える0.3%の中高度肥満」の人だけに集中した「生活習慣指導」を行うことが重要ではないかと思います。【11/25健診結果は27.4】
肥満が少ないと、当然ながら、日本肥満学会の権威が小さくなる。そんな事情があるのでしょう。
*痩せ過ぎは、命が危ない
「痩せ過ぎ」の危険があるため、上限値だけではなく、下限値も示す必要があるのです。
「痩せ過ぎ」になりBMIが18.5未満にまで低下すると、25~26.9の「やや太り気味」と比べ、3倍以上の死亡率を示しています。また、高血糖値(糖尿病)は「痩せ」が多い 。糖尿病になった人で、BMIが25未満は55%、日本で肥満とされる25以上が45%、30以上(国際的な肥満の基準)ではたったの7%。このように、糖尿病は意外にも「痩せ」のほうが多いのです。
●高血圧
高血圧は、脳梗塞や脳内出血、くも膜下出血の原因とされていますが、血圧に関する話は”常識のウソの宝庫”なのです。日本では、最高130mmHg以上/最低85mmHg以下最大か最小のどちらか一方だけが高めの場合も高血圧と呼びます。【11/25健診結果は120/80】
ところが、「日本高血圧学会」の基準を決定する委員会に、企業と「癒着」する委員がいて、企業側に有利な基準となることは珍しい話ではないのです。
基準値を決める委員が、おもに製薬会社のために数字を操作することです。水準を下げれば患者数が増えるのは当然のことです。その結果、降圧剤など薬物の使用量が増大します。降圧目標値は高血圧患者を増やすための「魔法の杖」なのです。
●中性脂肪は300(脂質異常症)でも、全く治療不要!
食事のたべすぎなどで、糖の余剰分をもとに、肝臓で中性脂肪が作られます。なお、アルコールによってその合成は促進されます。
受診基準は、300mg以上。(保健指導は150mg以上)欧米では、1000mgまで、家族性脂質異常(日本では1/500人)という伝染病以外、薬剤は不要。私は、中性脂肪は1000まで大丈夫だと考えています。【11/25健診結果は135】
健診の1週間前に食べすぎが続いていたら、一時的に中性脂肪値が高くなることもありますが、「短期間で変化する数値」だということを肝に銘じてください。副作用のある薬で下げることのほうが、よっぽど危険です。
中性脂肪値を下げるには、
① 余剰糖分が出ないように、空腹となってから食事を採ること。
② 寝る前に10分、軽い筋トレ。少し筋肉痛が出る程度が理想。
●高コレステロール(脂質異常症/旧 高脂血症)
*低下させると死亡率が高まる
コレステロールは不可欠な物質であり、低くすると免疫力が低下し、がんや肺炎の死亡率が増加します。
心臓病やがん、肺炎などすべての死亡原因を含めると、男性の場合、悪玉コレステロールと呼ばれるLDL(低密度のリボタンパク質)が100mg以上で死亡率低く、100mg未満で死亡率がだんだん高くなる。100mg未満になると、呼吸器系とがんで死亡率が上昇する。
更に別の調査では、高コレステのほうが、脳卒中による死亡率が低く、症状も軽いことが判明しており、コレステを低くすると免疫力は低下しさらに血管などがモロくなります。つまり、高コレステは、日本では総死亡率が低いことが判明したのです。コレステロールは高くても大丈夫ということです。【11/25健診結果は総コレ:145、HDL:44、LDL:79】
●危険で不要なCTとX線が横行(ANK東京がんセンター参照)
そもそも世界的に見ても、がんの早期発見目的でPET検診が行われている国は、日本くらいです。アメリカのがん研究機関が、PETによるがん検診の有効性を認めていません。有効性が証明されていないものに、高額なお金を払うというのは疑問に感じます。
PETは1台約3億円。使用する薬剤の管理費など含めた固定費が年間で1億円以上になる。 PETを導入した病院では、機会代や固定費を払うために「客」を呼び込む必要があります。マスコミもそれに便乗してPETがん検診のよさを煽って宣伝する。
たとえ得意な部位でのがんが見つかっても、結果、死亡率が減るという証明はされていないのです。新聞では過剰なCT検査が問題だと取り上げています。CTの被ばく線量は10-20mSyです。
直接撮影(大きなフィルムで撮影する方法)では15-25mSy。間接撮影(健診車による小さなフィルムで撮影する方法)では20-30mSyになります。胸部X線写真の被ばく量が0.1mSyですから胃バリウム検査では何と胸部X線写真の150-300倍の被ばくがあることになります。
また、健康な人でCT検査を毎年受ける人は少ないと思います。むしろ胃バリウム検査を毎年受ける人の方が圧倒的に多いと思います。レントゲン線は遺伝子の本体であるDNAを傷つける作用があります。
傷ついたDNAが原因で発癌するには1回の被ばく量が50-200mSy(広島長崎のデータ)と言われていますので、1回の胃バリウム検査で発癌することはありませんが、毎年胃バリウム検査を受けるとDNAが徐々に傷ついて発癌に至る可能性は否定できません。
健康維持のために胃バリウム健診を受けて発癌するとは何たるブラックジョークでしょう。それだけでなく飲んだバリウムが固まって排泄できなくて苦しむのは大変です。
そして、解剖学的に胃は三次元の袋状の形状をしています。それを二次元のフィルム上で表現するため前後壁のバリウムの重なりで病変の見落としが出て来ます。また食道はバリウムが垂直に落下するため撮影のタイミングが困難で微小病変は見逃しやすいのです。食道の微細病変を見つけるためには角度を変えて何枚も撮影する必要があります。
半年前の人間ドックで胃バリウム検査を受けて正常と診断された方が当クリニックの内視鏡検査で食道癌と診断されました。撮影は通常レントゲン技師が担当して読影は医師が担当します。ダブルチェックのようですが、撮影も読影も医師が担当するのが理想です。透視した者だけが病変を見つけることが出来てそれをタイミングを見計らってレントゲン写真としてフィルム上に撮影するのです。実際は技師が撮影して読影を医師が担当するので見落としの可能性があります。
■それではどうするか
だからと言って、今さらすぐに健診を止めるわけにはいかない。
健康診断の実施は事業者の義務であり(労働安全衛生法第66条1項)、使用者による健康診断の不実施は法違反となり、50万円以下の罰金に処せられる(労働安全衛生法第120条)。
また、事業者の実施する健康診断の受診は原則として労働者の義務であり(労働安全衛生法第66条5項)、労働者による健康診断の受診拒否は、就業規則等によって定める懲戒処分の対象となりうる。
■今年の人間ドック
昨年は年末ギリギリの12月27日の健診だったが、今年はそれよりは1ヶ月早い。
ここは、もう8回目。同じ健診機関の方が慣れてるので気分的に楽だ。しかし、健診機関により時間の早さ、丁寧さ、設備や、健診そのものが違うのもあるので、初めて人間ドックを受ける場合は、事前によく調べて決めた方がよさそうだ。
9時15分に受付に呼ばれ手続き開始。ここは46,000円だが、健保組合が10,000円を残し負担してくれる。そして、窓口で払った10,000円は会社が負担してくれる。要するにタダである。
検査は12時少し前に終わり、院内で健診機関が提供する食事。朝から何も食べていないせいもあり、とてもおいしい。
それから待合室で13時頃まで待ち、結果表を元に医師との面談。
いつもの通り、メタボ対策の指導を受ける。正式な結果は2~3週間後に送られてくる。
ところで、恥をさらせば、今はメタボど真ん中であるが、今年は去年より3.5kg体重が減った。ようやくダイエットに重い腰が上がりそうだ。
他の数値もこれまでより良くなった。血圧も昨年同様120/80と平常に戻っている。
健康診断は(問題点が見つからなければという但し書きが必要だが)、精神安定剤になることは確かだ。