○大塚勝久会長は大塚家具の創業者。○妻:千代子(大塚家具元取締役)との間に子供が5人いる。○長女:大塚久美子(大塚家具社長)○長男:大塚勝之(大塚家具 取締役専務執行役員営業本部長)○次男:大塚雅之(大塚家具 執行役員総務部担当部長)○次女:舞子○三女:智子(夫が大塚家具 取締役上席執行役員流通本部長の佐野春生)
家族は会長派3名対社長派4名で、真二つに分かれて対立している。
2月までは久美子氏の優勢が伝えられていた。2月28日の日刊ゲンダイ。「大塚家具」委任状争奪戦”骨肉争い”は長女の社長がリード
「久美子氏は取締役と監査役候補にも小売りの専門家を3人揃えた。元三越常務取締役の宮本恵司氏と元イトーヨーカ堂取締役の稲岡稔氏、小売り担当の元有名アナリストです。大株主の説得材料になるでしょう」(証券アナリスト)
そのうえ、プロキシーファイトになったことで、大塚家具の株価はきのう、ストップ高になった。「久美子氏は勝久氏に安値で株を買い占められる前に勝負に出た」(前出のアナリスト)とみられている。(図)
ところが3月4日の日刊ゲンダイ。大塚家具「委任状争奪戦」始まった父の逆襲…最強集団が援軍
父娘が壮絶な骨肉の争いを続ける「大塚家具」。父親の大塚勝久会長サイドが3日会見。勝久氏は欠席したものの、長男・勝之氏(45歳)と弁護士は、委任状争奪戦(プロキシファイト)について「勝つ予定です」と断言した。
長女の久美子社長が“優勢”とみられていた中での必勝宣言。強気の背景には、“日本最強”のコンサルタント集団の存在がある。
今年1月から勝久氏サイドをサポートしていることが明らかになったのは、IR(投資家関係)とSR(株主総会関係)を総合的に支援する日本最大の専門会社「アイ・アールジャパン」。1984年に設立され、従業員は約140人。日本とニューヨークに拠点がある。
これまで独自のネットワークを駆使し、プロキシファイトで数々の勝利を収めてきた。最近では、09年にTBSを支援し、買収を仕掛けた楽天に勝利。07年にはブルドックソースを支援し、米投資ファンド、スティール・パートナーズを退けている。三越と伊勢丹の統合も支援した。
「負けるつもりはサラサラありません」(アイ・アールジャパン関係者)と強気だ。
メディアをうまく使いながら世論を味方につけつつある久美子氏に、最強助っ人軍団で対抗する勝久氏。パパの逆襲が始まった。
さて、このお家騒動をどう評価するかだが、自分は会長側が不利と見る。
どちら側にしてもファミリー企業として会社を私物化しているようにも思えるが、会長側の方がひどい。
2月25日の会長側の会見で、後ろにずらっと幹部社員をさらしもののように並ばせたのはとても見苦しかった。(写真)
社長が政権を握った場合、彼らはどんな処遇を受けるのだろうか、とても気になる。
次の日に行った久美子社長の記者会見で、こんな質問が欲しかった。「今後、彼らをどのように扱いますか?」 それで社長の器が分かるというものだ。
ここで今さらながら考えさせられたのは、日本の同族経営と事業継承の問題点だ。
まずは、同族経営について。ファミリー企業(ファミリービジネス)と世襲企業は類似語である。
昨年末の大韓航空ナッツ・リターン事件(写真)で世襲企業の問題点が噴出し世界をあっと驚かせたが、どうもよその国の悪口を言っていられないほど、日本のファミリー企業は世界的に見ても突出した多さのようだ。
Wikipediaによると、『フランスには創業200年以上の優良企業が加盟するエノキアン協会という団体があり、全世界で40社(2010年6月現在)が加盟しているが、このうち5社が日本企業である。(月桂冠、赤福、法師、岡谷鋼機、虎屋)こうしたことから、日本は世界でも有数のファミリービジネス大国と呼ぶことができる』とある。
そして、『日本では、経済全体に占めるファミリービジネスのウエイトは極めて大きい。例えば、企業数で見ると、全体の約95%はファミリービジネスである。また、雇用者数は全体の6~7割を占めている。日本のファミリービジネスは海外に比べて長寿という傾向も見られる。業歴100年超のファミリービジネスは、欧州全体で6,000社、米国では800社と言われているのに対して、日本では3万社と推測されている』。
同族経営の定義は
『特定の親族などが支配・経営する組織のことをいう。日本の法人税法では、上位3株主の持ち株比率をあわせて50%を超える会社を「同族会社」と定義する。この定義によれば、株式の需要が低い中小企業の多くや、買収防衛策として経営者が株式の大部を確保している一部大企業も同族会社に該当することになる』
一方、ファミリービジネスは
『現在も創業家一族が所有し、経営において実質的な支配権を行使している企業をいう。法人税法で定義する同族会社のように、50%以上の出資比率を要件としない。例えば、出資比率はファミリー全体で5%しかなくても、創業家一族が経営陣になって実質的に支配している場合はファミリービジネスとなる。
一般的には、「ファミリービジネス≒中小企業」というイメージを持たれがちであり、実際に中小中堅企業が中心ではあるが、上記の定義によれば、ファミリーの出資比率が少ない上場企業であってもファミリービジネスに該当する。例えば、トヨタ自動車、竹中工務店、サントリーなどもファミリービジネスである。
何も同族経営そのものが悪いというわけではなく、メリットもある。
その一つは、株式買収によって経営権が奪われるリスクを低下させることで、結果株式に左右されない長期的な視点で見た経営を進めることができることである。
サントリーはそれで赤字続きのビールの販売を40年も続けることが出来、最近ようやく花が開いた。
そして、会社を一族に継承させることにより、社長交代など、経営陣の移行を円滑なものにできる点だ。次期社長候補の経営者としてのキャリア形成を、早期の段階から計画的に実施できることである。
しかしこれは両刃の剣であり、ポンカスの息子(娘)だった場合のリスクは大きい。経営者が自分の子供を正当に評価するという保証はない。
最大のデメリットは会社を私物化することである。
自分も世襲企業で働いたことがある。
全ての世襲企業がそうではないだろうが、経営者にとって会社は自分のもの、従業員は使用人である。
創業・経営者一族が(個人的な理由で)気に入った者を要職につけることで「イエスマン」しか存在せず、生活費や遊興費を社費でまかない、会社や資産の私物化を進めるなど、公私混同が甚だしかった。
何よりも大きなデメリットは、適切な能力を持たない者が経営者や管理者となるリスクが高いので、社員のモチベーションを低下させることにあった。
日本は更に世襲化が進んでおり、経営者だけではない、政治家などは最たるものである。とても北朝鮮のことを笑うことができない、ポンカスの「専制君主」が五万といるのである。
そして、事業継承。今、日本では会社経営者の多くが団塊の世代で後継者問題に悩まされている。
それは同族企業と言えども例外ではない。
買収劇、そして一族追放ーウルトラマンの守護のもと、一族が結束してきたはずの円谷プロダクションの承継は、なぜ失敗したのか? その過程からは、名門企業だからこそ悩ましい後継者問題の難しさが浮かび上がる。(写真は、「ウルトラマンが泣いている」円谷英明著・講談社刊)
世襲会長が会社の金をバカラ賭博につぎ込んだ大王製紙、娘婿への承継を進めてきたが次代のリーダーの急死で先行きが見通せなくなった自動車大手のスズキ、極度の業績不振で初の非創業家以外の社長を選択した竹中工務店、創業家の大政奉還を選択したキッコーマン。
大塚家具のように親が子供に先制攻撃を仕掛けたケースでは老舗和菓子店の「赤福」が知られる。2007年に商品の偽装問題が発覚して浜田益嗣氏が会長を辞任。長男で社長の典保氏が実権を握ったが、昨年4月、典保氏は解任され、母親の浜田勝子氏が社長に就任して世間をあっと言わせた。
菓子メーカーの「ロッテ」も同じ。今年1月、創業者の重光武雄会長が長男の宏之氏を副会長から解任した。
逆に子供が親に引導を渡した例ではタカラトミーに合併される前の「トミー工業」がある。1985年、富山允就社長の長男・幹太郎氏が英国留学から帰国し、リストラ案を提示。允就氏がこれを拒否して親子対立が持ち上がった。最終的に允就社長が退任し、幹太郎氏が社長に就いた。
アンパンで有名な「銀座木村家」でも 2012年に木村信義会長が娘の美貴子氏に解任されている。原因は信義氏が銀座で豪遊して多額の借財をつくった上に、高額の麻雀に負けては会社から毎月数百万円を引き出していたからだと報じられた。
子供が親を解任する場合、多くは子の言い分のほうが正当性が高いそうだ。
世間に親子対立をさらすのはほとんどが未上場企業で、大塚家具みたいな上場企業の騒動発覚はごくごく珍しい。まさに前代未聞である。
親子の内紛は感情がこじれてエスカレートすることが多い。原因の多くが親が会社を自分の所有物だと思い、近代経営を打ち出す子供がうとましくなって排除にかかるというもの。
会社の事業継承問題は今勤めている会社にもある。
以前いた会社は最盛期もあったが、今は低迷している。その原因の一つは事業継承にあったと思う。
経営者は次につなぐ場合、その人間の器量がもろに出るものだ。
自分を上回る可能性のある人物を推挙するには勇気がいる。得てして秘書室長などの子飼いを次期社長に据えることが多いのは、自分のやったことを否定されるのが嫌だからである。
いい会社は次期経営者に自分とは違うキャラクターなり経験者を選ぶものだ。例えばこれまで技術系だったら営業系とか、管理系とか。
そして、同じ会社に長くいた者の抜擢も難しい。余程傑出していない限り、足を引っ張られる可能性が強いからだ。同じ会社にいると欠点や過去の失敗などがよく見られるものだ。それがやっかみに繋がる。出来れば社外から引きぬいた方が望ましいと思う。
そのときの経営者はそれをやってしまった。
ところで、最近大手企業の抜擢人事が相次いでいる。(以下は、2月27日の日刊ゲンダイの記事)
三井物産、富士通、ホンダ……。取締役を経験しないまま、上司を飛び越えて社長に就く“抜擢人事”が相次いでいる。
4月1日付で三井物産の社長に就任する安永竜夫執行役員(54歳)は「32人抜き」。富士通の田中達也執行役員(58歳)と、デンソーの有馬浩二専務(57歳)は「14人抜き」で就任。ホンダの八郷隆弘常務執行役員(55歳)は、取締役「9人」を抜いて社長に就く予定だ。
なぜ、大手企業で抜擢人事が続出しているのか。
「多くの企業は、2020年の東京五輪までは好景気がつづくが、その後は一気に低迷すると見ています。企業にとっては、あと5年が勝負になる。2020年以降も生き残るためには、好景気の間に稼げるだけ稼ぎ、5年後にはM&Aや海外企業の買収などに打って出られるだけの体力をつけるしかない。
つまりデフレ時代は“守り”の経営が必要でしたが、この先5年間は“攻め”の経営が求められる。これまでとは違う人材が求められ、抜擢人事が相次いでいるのでしょう」(月刊BOSS編集長・関慎夫氏)
しかし、抜擢人事が成功するとは限らない。過去には失敗例も多い。シャープでは当時49歳の片山幹雄氏が最年少役員から社長に抜擢されたが、その後、経営危機を招き引責辞任している。
どんな抜擢人事ならうまくいくのか。
「成功するカギは、実力者が会長などとして会社に残り、新社長を全面的にバックアップするかどうかです。抜擢されても、先輩役員に面従腹背されたら新社長は舵を取れない。先輩役員が協力するように実力者が睨みをきかす必要があります。
ただし、実力者は絶対に院政を敷いてはいけない。かつて“山下跳び”といわれ、松下電器が“25人抜き”で山下俊彦を社長に就けた時は、松下幸之助が後見人になったうえ、就任1年後、山下社長がやりやすいように、番頭格だった4人の役員を辞めさせています」(関慎夫氏)
まだまだ、抜擢人事がつづきそうだ。
経営者だからといって人格的に飛びぬけたということはない。むしろ我がままで一般社会では通用しない人も多い。
せめて後継者選びのときだけは私利私欲を捨て、従業員の幸せのことを考えて欲しいものだ。
石原裕次郎/わが人生に悔いなし(1987年)