婚外恋愛という題名で投稿したことがあるが、日本語というのはズルイ言葉だ。
「言霊の国」であるのを利用して、婉曲な言葉を使い真実を曲げてしまう。
「少女買春」は「援助交際」にすり替わってしまうし、「引きこもり」は「二ート」、「敗戦」は「終戦」となり、戦後の意味合いが変わってしまった。
政府のキャッチフレーズにもそのような目くらましが多い。以前「骨太の方針」とか言っていたがあれは一体何だったのか、未だにわからない。「積極的平和主義」は「軍国主義」といった方が早いような気がするし、「アベノミクス」と言えばあたかもレベルの高い学問のように聞こえる。
「婚外恋愛」も同じである。「不倫」という背徳性のある言葉を、罪悪感を減らすように上手く言い換えている。
そしてこの同義語は、「姦通」、「不義密通」だが、こんな表現をするとおどろおどろしい。砕けた言い方にすると、「浮気」や「よろめき」である。
「よろめき」が「不倫」という言葉に変わったのは、TBSドラマ「金曜日の妻たちへ」(1983年)からだそうだ。
まずは、浮気と不倫の代表的な曲から。
○浮気の曲
ヒロシ&キーボー/3年目の浮気(1982年)
HOUND DOG/浮気なパレット・キャット(1982年)
○不倫といえばこの曲
島津ゆたか/ホテル(1984年)
手紙を書いたら叱られる 電話をかけてもいけない ホテルで逢ってホテルで別れる 小さな恋の幸せ ごめんなさいね 私見ちゃったの あなたの黒い電話帳 私の家の電話番号が 男名前で書いてある
奪えるものなら奪いたいあなた そのために誰か泣かしてもいい 奪えるものなら奪いたいあなた 一度でいいからあなたの肌に爪を立てたい
あなたは私の宝物 私はあなたの何なの ホテルで逢ってホテルで別れる 小さな恋のお相手 ごめんなさいね 私見ちゃったの あなたの家の日曜日 あなたは庭の芝を刈っていた 奥で子供の声がした 奪えるものなら奪いたいあなた そのために誰か泣かしてもいい 奪えるものなら奪いたい あなた 一度でいいからあなたと 街を歩いてみたい
小林明子/「金曜日の妻たちへⅢ・恋に落ちて」主題曲(1985年)
「金曜日の妻たちへⅢ」出演者、左より、いしだあゆみ、篠ひろ子、古谷一行、小川知子、坂東英二、奥田瑛二、森山良子。
自分も田園都市線沿いの青葉台に長く住んでいたので、30代から40代前半の既婚女性を見ると、「金妻」ではないかという色眼鏡で見ていたものだ。![]()

○不倫の有名曲を
鶴岡雅義と東京ロマンチカ/君は心の妻だから(1969年)
石原裕次郎/ブランデーグラス(1977年)
沢田研二/危険な二人(1973年)
サーカス/Mr.サマータイム(1978年)
テレサ・テン/愛人(1985年)
桂銀淑/すずめの涙(1987年)
不倫は本来は、倫理から外れたこと、人の道から外れたことを意味する。近年では特に、近代的結婚制度(一夫一婦制)から逸脱した男女関係、すなわち配偶者のある男や女が配偶者以外の異性と恋愛し、性交を行うことを指して用いられる(配偶者のいない男や女が、配偶者がいる異性と恋愛し、性交を行う場合も含む)。
日本の法律上、不倫は、夫婦がお互いに他の異性と性的交渉を持たない義務に反する行為であり、「不貞行為」(貞操義務の不履行)と見なされる。
一度きりの性的交渉も不貞行為とされるが、離婚理由になるには反復的に不貞行為を行っていることが必要とされる。男女間の密会が性的交渉を伴わない場合は「不貞行為」にはならない。
右画像は、土佐光起筆『源氏物語画帖』より「朝顔」。雪まろばしの状景。邸内にいるのは源氏と紫の上。
中世ヨーロッパでは「トリスタンとイゾルデ」がそれを扱ったものとして有名で、シェイクスピアの「ロミオとジュリエット」のヒントになった。左画像はエドモンド・レイトン画。
○小説では、『ボヴァリー夫人』(フローベール)、『アンナ・カレーニナ』(レフ・トルストイ)、『クロイツェル・ソナタ』(レフ・トルストイ)、『それから』(夏目漱石)、『暗夜行路』(志賀直哉)、『郵便配達は二度ベルを鳴らす』(ジェームズ・M・ケイン)、『ユリシーズ』(ジェイムズ・ジョイス)、『人間失格』(太宰治)、『不機嫌な果実』(林真理子)、『失楽園』『愛の流刑地』(渡辺淳一)、『東京タワー』(江國香織)、『海猫』(谷村志穂)など。
なお、ミズーリ川の支流に架かるマディソン郡の橋はローズマン・ブリッジといい、屋根付きの橋。
ある記事に「間違った結婚もあれば正しい不倫もあるでしょう。正しい結婚をされた方は幸せだが、残念ながら不幸にして、正しい不倫をされてる方の心情は判らないでしょう」とあった。
幸か不幸か、自分はこの意味が判る。