消費税増税のことを考えれば考えるほど、腹が立つ。
それは、増税により当然生活が苦しくなることだ。
増税と同時にその分を賃上げしたり、年金や生活保護費などを上げれば別だが、これは、物価の値上げという側面とともに、実質的な賃下げや生活給付金の削減いうことであり、多くの国民にとって、さらに家計が厳しくなる。
いつも買い物をしている人には分かるが、消費税アップの10月を待つまでもなく、カップ麺など、食料品を中心に、じわじわといろんな物が値上げしている。
・手紙・はがきは、手紙を82円→84円に、はがきを62円→63円に引き上げ。(画像)
・東京都内の公衆浴場の大人の入浴料金は、460円から470円に引き上げ。
・JR・私鉄各社の運賃10月の消費増税に合わせ、値上げの予定。
もう一つ、同じぐらい腹が立つのは、政府が行う増税対策である。
増税に対する軽減対策として、10月の増税時に導入される「軽減税率」と、来年6月末までの期限対策の「キャッシュレス決済」支援策は、まるで頭の体操をしているように複雑な制度で、どうしてこんな分かりにくいものを作るのだろうかと思う。
その手続きだけでも大変で、国も事業者も、そして国民も疲弊するばかりではないだろうか。
〇増税対策の問題点
■軽減税率対策
軽減税率は、増税に対する国民の反発を恐れ、自民党と公明党の間で取り決めた不満軽減策のようだが、これは、この政府では恒例のとなった、思い付きで決めた「生煮えの制度」で、これまでに何度もルールを変えている。(中小企業庁HP参照)
導入対策のために国も事業者(店舗)も莫大な費用と、制度を理解させるため社員教育が必要。店頭表示も複雑になる。何よりも問題なのは、かえって、それが消費者の不満を増大する可能性の方が高いという、いいことなど一つもない。お粗末な政策である。
これにかかる国の予算の総額は1,000億円超と言われているが、果たして、軽減税率を導入するために要した費用や手間は、それに見合うものだったのか、導入後にどこかで検証して欲しい。
個人的には、軽減税率は有り難くもなんともなく、精神衛生上からも、無くした方がすっきりすると思っている。
ところで、軽減税率という複数税率を導入した場合、通常の税率と軽減税率が混在する事業者は、下表の通り、飲食業と、小売業である。
なお、上記A型には次のようなレジがあるが、「券売機」も補助の対象になっている。
ところが、「軽減税率対策補助金」の現在の申請件数は政府が当初想定していた件数30万~40万件には遠く及ばない10万6千件程度(2019年6月時点)に留まっているそうだ。
全ての事業者がすでに軽減税率の導入に向けて対応を済ませている状況であれば、この数字は問題ないが、当時から時が経っているものの、2019年1月に大手リサーチ会社が小規模店舗のオーナー約1000人を対象に権限税率制度についての意識調査を行ったところ、既に対応を済ませたと答えた割合はそのうちの僅か5%程度しかいなかったという。
対応を行っていない理由の調査では「時間・手間・コスト面などの事情から対策を始めることが出来ない」が約40%以上と最多で、次点の「どのように対策すればいいかわからない」とあわせると合計75%になるというから恐ろしい。
このままでは、当初の混乱は避けられないと思うが、中々思うように対応できないという気持ちも理解できる。
政府は導入にはほとんど負担が少ないというが、次に述べるキャッシュレス決済支援策とともに、支払いが先で、費用補助は後になるので、手元資金がないと導入出来ない。その前に、政府への申請が全て通るとは限らないというのが怖い。
そして、それでなくとも人手不足だというのに、企業の担当者も、申請書の作成とか導入対応で大変だと思う。働き方改革どころではないと推測する。
来年の6月30日までの限定対策だが、「消費者がキャッシュレス決済手段を用いて中小・小規模の小売店・サービス業者・飲食店舗等で支払いを行った場合、個別店舗については5%を消費者に還元する。※加盟店登録要領に規程するフランチャイズチェーン等に属する中小・小規模事業者は 2%還元」というものだが、これがまた厄介な代物だ。
中小規模のお店でキャッシュレスで買い物をすると、5%ポイント還元するということは、実質的に5%の消費税になり、今の8%よりも安くなる。
こんなことなら、誰しも消費増税は必要ないと思うことだろう。
それが、これだけを聞くといいことだらけのようだが、そうは問屋が卸さない。
まずはお店が、キャッシュレス決済の加盟店として登録をしなければならない。そこに行くお客は、自分がそのお店で使えるカードなどを持っていなければならない。
そしてポイント還元であれば、次の買い物以降でポイントが清算されるので、そのお店で買い物を続けなければならない。電話の回線事業のように、囲い込み販売がさらに加速される。
その対策として、今頃になって、ポイント還元ではない、こんなことが決まっている。
消費増税、ポイント即還元 コンビニ大手、キャッシュレス決済2%分(朝日新聞、8月22日号) 消費増税時のポイント還元、クレカ6社が実質値引き(朝日新聞、8月27日号)
しかし、これまでのカードを使ったポイント還元との関係はどうなるのだろうか。その説明がない。
この対策は、一見中小規模のお店は、大型店に対すると有利のようだが、元々値引き自体に大きな差があり、果たして中小規模店の活性化につながるかどうかは不明だ。そして、もしこれで現在のポイント還元が廃止されると、全額国の補助となるので、大型店には有利な制度だ。
むしろ、キャッシュレス化の促進は、大型店と、中小規模店の差を加速しそうな気がする。
そして、これはITに弱い高齢者とか、電子マネーだと、現金をチャージしなければならないので、低所得者にとっては厳しい制度だ。
〇買い物弱者の増大
「買い物に一人で出かけるのが難しい「買い物弱者」が、高齢化とともに増加傾向にある。全国で700万人とみられており、過疎化の進む地方だけでなく、都市部でも今後深刻になると予想されている。それに対し、地域住民や医療・介護職、物流会社などが、対策に乗り出している」
というものだが、今進んでいる「セルフレジ」とともに、「キャッシュレス決済」はその「買い物弱者」をさらに増大させる制度である。
元々老人は電子マネーとかスマホには縁が遠い。
自分の生きている間はこんなややこしいものを使うことはないだろうと思っていた人たちにとって、これはショックだ。
もし、これを利用したとしても、使い方が分からない老人のレジの後ろには行列ができ、世代間の断絶はさらに進むことが危惧される。
ITが得意な人たちはいいだろうが、生活弱者と呼ばれる人たちにとっては、さらに辛い時代になりそうだ。