トランプ氏がアメリカ大統領に就任する日が近づいている。個人的にはとても憂鬱だ。
テレビを見ていると結構、待望論が多いが、これまでの彼の言動を見て本当にそう思っているのだろうか。
米国はトランプ政権で財政大盤振る舞い体制に入ります。ゼロ金利の出口から強制的に引っ張り出される格好で、昨年12月、既に利上げに踏み切りました。今年はさらに利上げの方向にグッと動くことになる。この金融環境の大きな変化に日本が対応できるのか。これは大問題です。
日本はとてもじゃないが、金利を上げられる状況ではない。日銀は昨年9月、あのヘンテコな「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」なる屋上屋を架したばかりです。あまり金利は上がらないけれど、さりとてマイナスにはならないように維持し、でも国債はそこそこ買うと。ものすごく難しい“お手玉”ですが、それを何とか実現できるフレームを死に物狂いでつくった途端、米国の金利が上がり始めた。
これで世界中の資金が米国に吸い寄せられることになりますが、世界を見回すと、日本が最も金利面で動きにくい状況なので、日本から最も勢いよくカネが流れ出していく可能性がある。日本経済は資本不足で干上がってしまいかねません。「日本経済のミイラ化現象」が起こり得るのです。
トランプ氏については、「大統領になれば変わるだろう」と良識的な論者は言いますが、希望的観測に過ぎないと思います。閣僚選びは過激派と金持ちばかり。TPPからは離脱で2国間貿易協定主義に切り替えるという主張も飛び出してきました。メキシコ国境の壁も、素材は変えるかもしれないが、つくると明言しています。変化の兆候は一切ありません。
「何か裏があるんじゃないか」「あれは建前だよね」と何の根拠もなく考えるのではなく、「発言通りのことをやってくるのだろう」と覚悟しておいた方がいいのではないでしょうか。
(以下略)
●人種差別、宗教的偏見や、マイノリティに対する蔑視発言
トランプ氏、女優ストリープさんと火花 受賞演説での批判に反撃(AFP=時事・1月10日)
米国で8日に開催された第74回ゴールデン・グローブ賞授賞式で、大女優のメリル・ストリープさん(67歳、写真)がドナルド・トランプ次期大統領を非難する一幕があった。
トランプ氏は翌9日に反撃し、ストリープさんは女優として過大評価されており、ヒラリー・クリントン前国務長官の「取り巻き」だとこき下ろした。(中略)
出席者らからのスタンディングオベーションで迎えられ、ハリウッド外国人映画記者協会(HFPA)から生涯功労賞に当たるセシル・B・デミル賞を受け取ったストリープさんは、感情を抑えきれない様子を見せながら、以下のように語った。
「私やここにいる皆さんは、今の米社会で最も見下された区分に属しています。考えてみて下さい。ハリウッドに外国人、マスコミですよ」と語り、観客の笑いを誘った。
トランプ氏は昨年の選挙戦で、移民やメディアの「偏向」報道を頻繁に批判していた。また米エンターテインメント業界は、トランプ氏のライバルだったクリントン氏を広く支持しており、多くのスターがそれを公言していた。
「わが国で最も尊敬されるべき座に就きたいと望む人が、障害のある記者の物まねをしました。特権や権力、反撃能力で自分よりも劣る人をです。私はそれを見て、心が痛みました」「侮辱は侮辱を招く。暴力は暴力を引き起こす。有力者が自らの地位を悪用して他者をいじめれば、私たち全員にとって負けになります」(以下略)
人種間の憎悪爆発 トランプで米が“リベンジ社会”と化す日(日刊ゲンダイ・1月8日)
になるのがとても怖い。
●思い起こして欲しい。トランプは選挙には勝ったが、得票数では大きく負けていたのだ。
11月20日投稿の、トランプ次期米大統領でお知らせしたが、そのときはまだ大統領選挙の集計は続いていた。
最終結果は、選挙人投票数は307票対227票で、共和党のドナルド・トランプ候補の大統領当選が確定した。一方、一般有権者投票では、6584万対6297万で民主党のヒラリー・クリントン氏が勝利を収めた。その差は何と300万票近く彼女の方が得票数で優っていたのだ。
いくら勝ったと言えども、アメリカは少なくとも真っ二つに意見が分かれたということだ。民主主義国家である以上、半数以上の有権者を無視して政権運営は出来ないはずだ。
●トランプ氏のはったりと、公私混同ぶりが怖い
昨日と、今日の朝日新聞
トランプ氏…有能なビジネスマンって本当? 実像を探る(朝日新聞・1月9日)
ビジネスで成功した私は大統領にふさわしい――。そう訴えて、米大統領の座に上りつめた「不動産王」トランプ氏。しかし、経営する企業の実態は不明な点が多いうえ、過去には関連会社が次々と経営破綻するなどトラブル続きだった。ビジネスマンとして本当に有能だったのだろうか?
■「資産1兆円」というが
ニューヨーク・マンハッタン5番街のトランプタワー。目抜き通りの超一等地にそびえ立つ高層ビルには、トランプ氏のほか、各界のセレブや有名企業のトップが暮らす。1階部分に「グッチ」などの店舗があり、きらびやかな雰囲気は「成功者」のイメージそのものだ。
ただ、光り輝くトランプ氏の所有する建物とは裏腹に、同氏のビジネスの実像となるとナゾに包まれた影の部分が多い。
事業の中核となるのは、不動産会社「トランプ・オーガニゼーション社」。株式を上場していないため財務の状況などはよく分からない。しかも、幹部にはトランプ氏の長男ジュニア氏や長女イバンカ氏、次男エリック氏が名を連ねる。典型的な家族経営だ。
公開資料やメディアによると、企業価値は43億ドル(約5千億円)と推定される。保有する資産の7割近くはニューヨーク地区に集中。トランプ・オーガニゼーションが仮に上場した場合、株式時価総額は全米800位程度にとどまるとされ、世界的な企業というより「ニューヨークの地元企業」といえそうだ。
トランプ氏は、自身が保有する資産総額について「100億ドル(約1兆1700億円)を超える」と豪語するが、米経済誌フォーブスが昨年9月に公表した資産総額は推計で37億ドル。不動産価格の値下がりで、1年前から8億ドル減った。本人の「言い値」と大きくかけ離れている。
トランプ氏、しがらみ抱え 大統領職と手広い事業、利益相反の指摘(朝日新聞・1月10日)
トランプ次期米大統領は不動産業やホテルなどのビジネスを世界で展開してきた。大統領になれば「国益」を代表することになるが、自身の事業との利益相反を生み出す恐れがある。すでに多くの訴訟や借金もあり、新大統領はビジネスリスクのしがらみを抱えて就任する。
「大統領が利益相反を問われることはあり得ない」
トランプ氏は大統領選後の昨年11月、米紙ニューヨーク・タイムズとのインタビューでこう言い放った。
ブッシュ政権で、ホワイトハウスの倫理担当弁護士を務めたミネソタ大学のリチャード・ペインター教授は「過去には、資産家の大統領は何人もいる。しかし、トランプ氏のように世界各国につながるビジネスを展開した人はいない」と話す。その上で、大統領としての職務と、経営者としての判断の間で、利益相反が起きるかもしれないとの懸念を示した。
その一例は、昨年、首都ワシントンの旧郵便局の建物を改造して開業した「トランプ・インターナショナル・ホテル」だ。建物は今も米連邦政府が所有し、トランプ氏の関連企業にリースしている。トランプ氏が大統領に就くと、建物の「貸主」と「借り主」に同時になってしまう。
明らかな利益相反になるが、トランプ氏がさほど気にしている様子はない。利益相反を禁じる法律の対象に大統領がなっていないことからだ。インタビューでもトランプ氏は「法律は完全に私の側にある」と強調している。
一方で、米国憲法は公職にある人が議会の許可なく、外国政府から贈与や報酬を受け取ることを禁じており、この規定に違反するという意見も出ている。
ワシントンのトランプ・インターナショナル・ホテルは昨年、海外の外交官を招いたイベントを開いた。外交官からは「泊まることで、大統領への印象を良くしたい」との声が出た、と米メディアは報じている。
オバマ政権で倫理担当弁護士を務めたノーマン・エイゼン氏は「憲法の規定は、外国政府からの影響を排除するために設けられた」と指摘、外交官からの宿泊費が会社を経由してトランプ氏の資産となれば、憲法に抵触すると話す。
トランプ氏は昨年のツイッターで「大統領に専念するため、ビジネスを離れる」と発信。この問題について今月11日に開く記者会見で説明するとみられる。
ただ、エイゼン氏は「トランプ氏が会社経営から離れても、所有している限りは同じだ。子どもが会社経営にかかわるという点もおかしい」という。エイゼン、ペインター両氏らが連名で出した提言では「ビジネスをすべて売却しない限り、問題は解消しない」と指摘。このままでは就任とともに違憲状態が生まれると主張している。
■訴訟の山、駆け込み和解も
トランプ氏は多くの訴訟を抱えている。USAトゥデーの集計によると、関連会社を含めると、これまで4千件以上の訴訟に関わっているという。
トランプ氏は5日、訴訟に関連して弁護士の質問に答える「宣誓供述」に時間を割かなければならなかった。米国で、訴訟が本格的に始まる前に行われる手続きだ。ワシントンのホテルに出店予定だった著名シェフが、トランプ氏の差別的な発言を理由に撤退し、トランプ氏側が「契約違反だ」と訴訟を起こした。シェフ側も争う構えで、訴訟は大統領になっても続く。
このほか、ゴルフ場の会員から集団で訴えられた訴訟や、セクハラを報告したことを理由に解雇されたと主張する元従業員との訴訟が続いているという。
大統領になっても、こうした訴訟からは免除されず、リスクとしてついて回る。米メディアによると、訴訟で現職大統領が最後に宣誓供述を求められたのは、セクハラで訴えられたクリントン大統領。この時に別の女性との性的関係を否定したことが偽証にあたるとして弾劾(だんがい)裁判につながった。
トランプ氏も、大きな訴訟は就任前に決着させたいようだ。不動産セミナー「トランプ大学」の受講者たちが、「詐欺だった」として起こした集団訴訟などについては当選後、争う姿勢を一転させて2500万ドル(約29億円)を支払う和解で合意した。ただ、原告が和解を不服として争うことも可能で、法廷での手続きは終わっていない。
■国内外に多額負債
「不動産王」のトランプ氏は「借金王」を名乗ったこともある。借り入れを活用することでビジネスを伸ばしてきた。
昨年に公開した資産報告書によると、トランプ氏の関連企業は、不動産を抵当に少なくとも3億1500万ドル(約368億円)を借りている。ただ、ニューヨーク・タイムズの分析によると、実際の借入額は少なくとも6億5千万ドル(約760億円)に上る。
大統領に就任すると、この借り入れも問題になるかもしれない。資産報告書によると、トランプ氏の関連会社の主要な融資元の一つにドイツ銀行の米国法人がある。ニューヨーク・タイムズによると、中国銀行もトランプ氏が一部を所有するビルを抵当に融資をしているという。トランプ氏が、海外の金融機関から借り入れをしている形だ。
ドイツ銀行は過去の不正取引をめぐって米司法省から厳しい追及を受け、現在もロシア関連の融資について捜査を受けているとされる。今後、トランプ氏が融資を受けている金融機関の規制も担う可能性がある。
また、ウォールストリート・ジャーナルによると、トランプ氏の借り入れの多くは証券化され、投資家らに売られてきたため、実際には150機関以上が所有している。同紙は「幅広い金融機関が、新しい大統領に対して影響力を行使できる可能性のある立場にある」とみている。
●アメリカ第一主義の怖さ
【報ステ】GMがトランプ氏の“警告”に反論(テレビ朝日系(ANN)・1月9日)
アメリカのトランプ次期大統領から「関税を払わずにメキシコでつくった車を輸入している。アメリカ国内で生産しろ。さもなきゃ高い関税を払え」と“警告”されているアメリカ最大の自動車メーカー『ゼネラル・モーターズ』のバーラCEOは「以前からの計画だ。多額の投資は長期的な計画で行われるもので、2~4年前から進めているもの」と述べ、生産計画の変更を否定した。
一方、かつてビック3の一角を占めていた自動車メーカー『フィアット・クライスラー』は「アメリカ国内の工場に1000億円以上を投資し、約2000人を追加で雇用する」とトランプ氏に名指しで批判される前に、国内で雇用を増やすと発表した。
トランプ氏はメキシコで新たな工場の建設を行っているトヨタも批判していて、日本時間の10日にデトロイトで行われる北米最大の自動車ショーに出席するとみられる豊田社長の発言に注目が集まっている。
早速、トヨタは以下の発表を行った。
トヨタ、米に1兆円超投資…トランプ氏批判受け(読売新聞。1月10日)
トヨタ自動車の豊田章男社長は9日、北米国際自動車ショーが開かれている米デトロイトで講演し、米国に今後5年間で100億ドル(約1兆1700億円)を投資する計画を明らかにした。
トランプ次期米大統領は同社がメキシコで予定している工場建設計画を批判している。トヨタは米国で雇用を増やす方針を打ち出し、矛先をかわしたい考えだ。
豊田社長は講演で、米国で約13万6000人を雇用していることや、約60年間に約220億ドル(約2兆5700億円)の投資を行ったことなども説明した。
そんな脅しを行っていいものだろうか。
●それに比べ日本のメディアは暢気なものだ。
1月8日のテレビ朝日系・TVタックル。こんな眉唾物の話をテレビで放映していいの。
カジノ法案成立による北方領土返還の可能性について解説。12月15日にカジノ法案を無理やり成立させたのは、プーチンの来日があったからだとする。
ストーリーははこうだ。「日米露で北方領土にカジノ建設→3国同盟結成→北方領土が歴史的返還?」
「トランプ氏は10年前の来日時に北方領土にカジノ建設の構想を明かしていた。トランプ氏にはエクソンモービルCEOのレックス・ティラーソンがバックにいて、90年代からサハリン北で油田・天然ガス開発をずっとやってきた。」「サハリン北での油田・天然ガス開発で潤った金で北方四島(特に択捉島)にカジノ建設する。択捉島には最新鋭の空港が作り変えられていて、メドベージェフ首相は北方四島をタックスヘイブンにすると話している」「北方四島開発には北海道が前線基地になる」など解説。
トランプが北方領土の土地を買う「領土としては帰ってこないかも」、その土地を売ったお金で北方領土を開発する、プーチンの人気が下がっているので、3月の大統領選が終わるまで動けない。
ソ連、ロシアは長い間アメリカの宿敵だった国。しかも、プーチン大統領はKGB出身である。CIAやFBの中にはOBも含めてKGBに煮え湯を飲まされた人間は沢山いるに違いない。大統領にならんとする人間がKGBと「お友だち」であったならお笑いで済まされる話ではあるまい。
それが、米大統領選を標的にしたサイバー攻撃をロシアが仕掛けたとのに、公然と疑問を呈するトランプ次期米大統領の発言が「前代未聞だ」と波紋を広げている。
これらを聞いてトランプ大統領に過大な期待を寄せられるだろうか。アメリカ国民は前代未聞の選択をしてしまったと断言できる。
1月20日の就任式がとても憂鬱だ。