台風18号がこんな惨禍を招くとは思わなかった。
東からの風が、南西からの空気の流れを押しとどめる形になったことで、大雨が降る範囲は広がらず、「線状降雨帯」となり、東西約100~200キロの幅に収まった。このことも雨が激しくなった一因だ。積乱雲は南北の帯状にずらりと並び、鬼怒川の流域とほぼ重なった。
帯状の範囲の中でも茨城、栃木両県で雨が特に激しかったのは、二つの空気が最も強くぶつかりあったためとみられる。栃木県北部では湿った空気が山にぶつかって上昇し、積乱雲ができやすくなっていた可能性がある。
南西から湿った空気をもたらした低気圧は、日本海で気圧の谷に差し掛かり北上する速度が遅かった。このため、雨が降る帯状の範囲もあまり移動せず、長時間同じ場所で大雨が続く原因になったとみられる。
今回のように台風に関係する空気どうしがぶつかって帯状の範囲の大雨になるのは珍しいという。
9月7日0時から10日17時までのアメダス観測値によれば、期間降水量は日光市今市で645.5ミリ、同市五十里での622.0ミリ、土呂部の561.5ミリなど栃木県の各所で400ミリ以上を観測した。
常総市によると、11日午前0時までに353人から救出要請があり、うち70人がヘリなどで救助されたが、271人がまだ取り残され、12人はその後連絡が取れなくなったという。11日現在22人が行方不明になっている。
「まさか、ここでも」。茨城県など北関東地方に大きな被害をもたらした南北に連なる「線状豪雨」が、今度は東北地方を襲った。河川はまたもや未明になって次々と氾濫。住宅街や周囲の水田を次々とのみ込み、住民の多くはなすすべもなく、救助を待った。
宮城県北部の田園地帯。大崎市を流れる渋井川の堤防は11日午前5時前に決壊し、付近の住宅街に水が流れ込んだ。(映像)
9月11日17時50分に公表された集計によれば、8日以降岩手県から香川県までの1都19県で約18万人に避難指示が、約272万人に避難勧告が発令された。
また、確認されている死者は3名、行方不明23名、負傷者27名、家屋の全壊6棟、一部破損20棟、床上浸水379棟、床下浸水1665棟、非住家被害は11棟となっている。
懸念すべきは、今年が台風が多発する年だということだ。すでに昨年のペースを優に超え、統計開始以降、歴代9位の31個を量産した一昨年を上回るペースで発生している。9月、10月とシーズンに突入し、台風が日本列島を次々に直撃する恐れが大きいという。すでに台風19号がハワイ沖で発生し、来週にも日本に接近する可能性がささやかれている。
ウェザーマップの気象予報士・佐藤大介氏が言う。
「今年は発生数、接近数、上陸数ともに平年より多く、威力も強い傾向です。エルニーニョ現象で海水温が高めな上、台風が生まれる海域が南太平洋の東にずれ込んでいる。日本列島からより離れた海域で発生し、暖かい海の上空を長く移動してくるので、パワーを増して近づいてくるのです。同時多発的に台風が発生し、まとまって日本列島に近づくケースが少なくないので、この先も今回のように極端な大雨が各地で降り続けるケースは十分に考えられます」
台風と地震の関係も心配だ。米マイアミ大などの研究チームによると、豪雨を伴う大型熱帯低気圧に襲われたエリアでは、4年以内にマグニチュード6.0以上の大地震が起きている。活断層を抑えていた地表の地盤が豪雨や土砂崩れで押し流され、重みが取り除かれて地震が誘発される――との仮説だ。
年 | 発生期間 | 最低気圧 hpa | 最高風速 m/s | 死傷者 人 | 被害地 | |
2015(平成27) | 9/7 | 9/9 | 985 | 55 | 死者3名 行方不明2名 | 北マリアナ諸島日本 |
2014(平成26) | 9/29 | 10/6 | 935 | 50 | 死者5名 行方不明2名 | 日本 |
2013(平成25) | 9/13 | 9/16 | 960 | 35 | 死者6名 行方不明1名 | 日本 |
2012(平成24) | 9/24 | 9/30 | 985 | 25 | ― | 小笠原諸島 |
2011(平成23) | 9/25 | 9/27 | 996 | ― | ― | ― |
2010(平成22) | 無 | ― | ― | ― | ― | |
2009(平成21) | 9/30 | 10/8 | 910 | 55 | 死者6名 | 日本 |
(Wikipedia 参照)
(写真左より、2015年、2014年、2013年、2012年、2011年の台風18号進路)
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ザ・カスケーズ/悲しき雨音 (1962年)