日本には経営のプロが少ないと言われる。
多分その理由は、業務効率化やコストカッターに有能な経営者ばかりが重用され、経営哲学=人生哲学に秀でる人材を軽んじているからではないだろうか。
経営者の人生はいつも順風満帆とはいかない。不運な時ほどその人の生きざまが試される。
彼は、1992年の開業以来、18年連続で赤字決算を続け瀕死状態にあった長崎県佐世保市の「ハウステンポス」をたった1年で黒字転換するという離れ業を演じて見せた。
その経緯は2013年の朝日新聞土曜版beの「逆風満帆」で詳細を語っているが、こんな印象的な言葉が心に焼きついた。
「得意淡然、失意泰然」-うまくいっているときはあっさりと、うまくいかないときはゆったりと。
最近流行りの謝罪会見では、社長の見識が問われている。
日刊ゲンダイ7月2日号に「オトナの社会講座」という記事が載っていた。
最近の謝罪会見は全然心に響かない。一体どうしたらいいのか。
危機管理のプロ・田中辰巳氏に聞いている。
彼によると「模範となるのは、2003年の「西部警察2003」を撮影していた際、急発進したスポーツカーで見物人5人にケガを負わせてしまったときの石原軍団の会見」(写真)という。




このコラムでは最後にこう締めくくっている。
軍団のボス・石原裕次郎は、戦後の日本に夢と希望を与えただけでなく、実は「正しい謝り方」も教えていたということだ。
6月に「進研ゼミ」などで知られる通信教育大手のベネッセホールディングス社長兼会長に就任したばかりの原田泳幸(はらだ えいこう)氏(現在65歳、写真)が苦境に立たされている。
彼は、てっきり手を引いたと思っていた、日本マクドナルドの会長を兼任しているため、ベネッセの未曾有の情報流出に加え、マクドナルドのナゲットに使用されている中国からの肉の中に賞味期限切れが使われていることが発覚、その対応に追われるダブルパンチに見舞われた。
奇しくも彼は長崎県佐世保市出身。ハウステンポスの再興と好対照の結果になっている。
原田泳幸氏ほど毀誉褒貶の激しい経営者はいない。
外資系の社長を渡り歩いたが、 Macintoshの略称・愛称「マック」のアップルコンピュータ日本法人から、マクドナルドにヘッドハンティングされたとき、「原田氏、マックからマックへ転身」と報道されたこともある。
彼が日本マクドナルドの社長に就任したのは2004年。
債務超過50億円のどん底から出発し、鮮やかにマクドナルドをよみがえらせた。外食業界では店舗売り上げの前年割れが常態化する中、2011年12月期マクドナルドの既存店は8年連続で前年比プラス、営業利益282億円と上場後過去最高益を記録した。(下図は売上高が連結数字、利益は純損益のため参照にはならない)
前任の創業者社長である藤田田が進めてきたバリュー戦略の見直しを次々に打ち出し、行き過ぎた安売りで失墜したマクドナルドのブランドイメージの建て直しに奔走、短期間で建て直した。
それが現在の日本マクドナルドの戦略の大本になっているのだそうだ。才女である。
谷村有美/最後のKISS
彼は、その経営手腕の評価から、2009年12月に「GQ Men of the Year 2009」の一人に選ばれ、2011年10月には日本経団連の関連組織である経済広報センターより「企業広報経営者賞」を受賞した。
しかし、その一方で、行きすぎたFC化が弊害も生み、訴訟に発展した他、幹部級の人材の流出も相次ぐなどして、2013年11月第3四半期累計(1 - 9月)の連結経常利益は前年同期比39.1%減の108億円に落ち込み、通期計画の195億円に対する進捗率は55.6%にとどまり、5年平均の75.8%も下回った。
このような状況から同社が強みとしていた現場力も低下し、2012年12月期以降の業績続落の原因となった。
進研ゼミなどの教育事業や老人介護事業などを展開しているベネッセは、確固とした企業理念と人間的な温もりが必要な会社である。
それに対して原田氏は、コストダウンや価格戦略を重視するアメリカ型の経営者であり、日本マクドナルド創業者の藤田田氏が亡くなった時に社葬どころか会社として偲ぶ会さえ営まなかった人物だ。そういう合理的思考の経営者がベネッセの適切な舵取りと変革を担うのは極めて難しいだろう」(大前研一氏談:週刊ポスト2014年5月2日号)
友人からも、「アウトローっていうのか、経団連的な経営者にはないタイプだよね」と評価されている。敵も多い。
友人からも、「アウトローっていうのか、経団連的な経営者にはないタイプだよね」と評価されている。敵も多い。
リスク管理に定評のあった「プロ経営者」は、今回の局面では迷走が目立ち、マクドナルドを復活に導いた「原田マジック」は影を潜めているようだ。
原田氏は、流出を公表した7月9日の謝罪会見で、金銭的な謝罪を考えていないことを強調するとともに、流出情報を利用した他の通信教育会社の倫理を問う発言を繰り返した。
謝罪会見の場で他を非難する-企業広報に詳しい関係者によると、こうした行為は責任転嫁と受け取られやすく、やってはならないことのひとつとされる。
さらに7月17日の会見では、200億円の原資を用意して金銭補償する方針を表明。予想を上回る顧客からの反発を受け、一転して考えを翻す格好になった。
謝罪会見の場で他を非難する-企業広報に詳しい関係者によると、こうした行為は責任転嫁と受け取られやすく、やってはならないことのひとつとされる。
さらに7月17日の会見では、200億円の原資を用意して金銭補償する方針を表明。予想を上回る顧客からの反発を受け、一転して考えを翻す格好になった。
事件の全容解明、再発防止策も全くなされていない段階で、騒ぎが大きいと見るや、とにかく金銭的な対策で幕引きをはかりたいという意図がうかがえるかのようなこの施策発表。「何事もカネで解決する」という経営姿勢の表れではないのかと感じた人も多かったようだ。
そして7月22日の会見では流出していないとしていたクレジットカード番号などのセンシティブ情報についても、流出の可能性を認めた。この会見は最高リスク管理責任者に任せ、原田氏は姿を見せなかった。
こうした「原田マジック」が期待されたベネッセでは、いきなり予期せぬ不祥事に見舞われているが、「プロ経営者」らしからぬちぐはぐさが目立つ。
こうした「原田マジック」が期待されたベネッセでは、いきなり予期せぬ不祥事に見舞われているが、「プロ経営者」らしからぬちぐはぐさが目立つ。
彼の経営者としての引き際と、見識や人生観が問われている。
水戸黄門主題歌/あゝ人生に涙あり(1969年)
ブレンダ・リー/ごめんなさい(1960年)
(Wikipedia参照)